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藤井王将3連覇か、菅井八段初の王将獲得か――第73期ALSOK杯王将戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
八冠を保持する藤井聡太王将は菅井竜也八段と二度目のタイトル戦(筆者撮影)

 藤井聡太王将(21)=八冠に菅井竜也八段(31)が挑戦する第73期ALSOK杯王将戦七番勝負(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は1月7、8日に栃木県大田原市「ホテル花月」で第1局が行われる。

 藤井王将にとっては3連覇がかかる防衛戦。菅井八段にとっては初の王将獲得がかかる七番勝負だ。

 データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<王将戦七番勝負日程>

第1局 1月7、8日 栃木県大田原市「ホテル花月」

第2局 1月20、21日 佐賀県三養基郡「大幸園」

第3局 1月27、28日 島根県大田市「国民宿舎さんべ荘」

第4局 2月7、8日 東京都立川市「オーベルジュ ときと」

第5局 2月17、18日 大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」

第6局 3月9、10日 静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」

第7局 3月30、31日 東京都練馬区「白瀧呉服店」

<藤井王将の最近10局>(相手の肩書きは対局当時。放映前のテレビ対局を除く)

9月27日 王座戦五番勝負第3局

対永瀬拓矢王座 ○

10月6、7日 竜王戦七番勝負第1局

対伊藤匠七段 ○

10月11日 王座戦五番勝負第4局

対永瀬王座 ○

10月13日 銀河戦決勝トーナメント準決勝

対杉本和陽五段 ○

10月17、18日 竜王戦七番勝負第2局

対伊藤七段 ○

10月21日 将棋日本シリーズ準決勝

対永瀬九段 ○

10月25、26日 竜王戦七番勝負第3局

対伊藤七段 ○

11月1日 銀河戦決勝トーナメント決勝

対丸山忠久九段 ●

11月10、11日 竜王戦七番勝負第4局

対伊藤七段 ○

11月19日 将棋日本シリーズ決勝

対糸谷哲郎八段 ○

<菅井八段の最近10局>

11月7日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島将之九段 ○

11月10日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木勇気八段 ○

11月16日 順位戦A級

対佐々木八段 ○

11月20日 NHK杯本戦

対中村太地八段 ●

11月22日 ALSOK杯王将戦リーグ

対近藤誠也七段 ○

11月30日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対宮本広志五段 ○

12月8日 竜王戦1組

対斎藤慎太郎八段 ○

12月12日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対黒田尭之五段 ●

12月15日 順位戦A級

対斎藤八段 ○

12月21日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対藤本渚四段 ●

藤井王将の不安材料は対局間隔の空き

 藤井王将の直近10局は9勝1敗と変わらず「絶好調」でスキを見つけるのは困難だが、不安材料があるとすれば全八冠を制したことで予選出場の機会がなくなり、対局間隔が空いていること。王将戦七番勝負は公式戦としては約1カ月半ぶりの対局となる。

 トップ棋士ばかりの王将戦リーグを5勝1敗でプレーオフなしに挑戦権をつかんだ菅井八段も直近10局は7勝3敗と好調を維持しているが、調子の比較では藤井に分があるといえよう。

 過去の直接対決は藤井王将が9勝4敗(4千日手)と勝ち越しているが、対局数の割に千日手(指し直し)の数が多くギリギリの競り合い、駆け引きが演じられたことがわかる。

 両者のタイトル戦番勝負は昨年4月から5月にかけて行われた叡王戦五番勝負のみで、この時は藤井の3勝1敗(2千日手)と内容的にはきわどかった。王将戦は長丁場の七番勝負だから叡王戦の時以上に、今回も菅井八段の勝負術が藤井王将を苦しめる可能性は少なくないと見る。

菅井八段の振り飛車戦略に注目

 戦型は藤井王将の居飛車対菅井八段の振り飛車になることはほぼ間違いない。飛車を振る筋に関しては菅井八段が選択権を握っている。

 最近の採用率からは菅井八段先手なら三間飛車か中飛車。菅井八段後手なら三間飛車か四間飛車の可能性が高そうだ。

 藤井王将は対中飛車で急戦を志向する以外は居飛車穴熊を主体とした持久戦策を用いることが多く、菅井八段は振り飛車の常用手段である美濃囲いだけでなく穴熊も得意としているため、今回の七番勝負は長期戦のねじり合いが多くなると思われる。

 AI同士の対局では振り飛車は評価値的にやや不利とされるが、ミスが出ることが前提の人間同士の勝負はまた別。最近扇子などに「修羅道」と揮毫する菅井八段が信念をもって採用する振り飛車が七番勝負を盛り上げてくれるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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