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【涌谷町】「源泉くらいしか良いところなかった」天平の湯を1年で黒字化させた漢の努力と苦労を聞いてきた

ささキジ取材が得意なWebライター(遠田郡・大崎市・登米市)

どうも。ささキジです。

今回の記事は近くに住んでいる人、そうでない人も一度は利用したことがあるんじゃないかという施設

【わくや天平の湯】

実はコロナの影響もあって、内情は経営難に苦しんでたんですね。

そんな状態だった天平の湯ですが、2023年4月にNPO法人「まち感動クリエイティブ」(仙台市)が町から指定管理者に選ばれました。

簡単にいうと温泉施設の管理を民間事業者に委ねますね!みたいな感じです。

そこで天平の湯の運営を切り盛りするため仙台からやってきた孤高の戦士が

天平の湯マネジャーの中島 翼(なかしまつばさ)さんというわけです。

中島さん:「ぶっちゃけて言ってしまうと、当時現状のまま引き継いだわけですが"源泉"くらいしかいいところないんじゃない?と思ってしまうような状態でしたね」

いきなり飛ばす中島さん。大丈夫かこれ。記事にできんのかこれ。

先に言ってしまうと、中島さんがやってきた2023年4月からこの記事を書いている2024年11月までで経営は黒字化が見えてきた状態に。直近数ヶ月はコロナ前の利用者数を超えているとのこと。

現在も記事を書いたり広告をうったりなど、ネットマーケティングを生業として生きているささキジにとって、1年で経営難を脱出した中島マジックとやらがとても気になる。

ということで今回は天平の湯自体の紹介と、天平の湯の運営の裏側について【根掘り葉掘り】聞いていきます。

普段知ることのない側面の天平の湯を知れば、きっとより魅力的に感じるはず。最後まで記事を読んでもらえたら嬉しいです。

※とても文章量が長いです

掃除が行き届いている館内。意識して感じたことはなかったがよく見ると隅々まで綺麗になっている。

中島さん:「まず土台として固めないといけないなと思ったのが、従業員の方々の意識改革ですね」

以前だと「そこは自分の持ち場じゃないのでわかりません」「やりません」だったり、マナーの悪いお客さんに正面から戦ってしまうなどの状況があったらしい。

中島さん:「お客様に満足してもらうために何ができるか?や、なにをすべきなのか?を考えて動いてもらえるようになって欲しいと思ったんです」

そのためにまずは詳細は言えないが従業員の方々の待遇を改善。過程は一切評価せず、結果を評価することを言い切った。

ここでささキジは自分も体験したことがあるからこそ思う。

ささキジ:「こういう田舎寄りの地域でそれやると周りからめんどくさいやつと思われるのでは…大丈夫でした?」

洋風と和風の浴場は日替わりで切り替わる。なかなか珍しい運営体制
洋風と和風の浴場は日替わりで切り替わる。なかなか珍しい運営体制

中島さん:「おっしゃる通り、最初は大丈夫じゃなかったですよ!なんだあの仙台から来た意識高い系の変なやつは…パッと出で来たくせに。みたいな感じは正直ありました」

だよねぇ。マーケティングの本とか、仕事のマネジメントの本なんかを読んできてわかるのが

ささキジ&中島さん:「地方でその知識は想像以上に通用しない」

ということ。

洋風風呂にあるサウナ。洋風の方が広く、サウナに力が入っているとのこと。
洋風風呂にあるサウナ。洋風の方が広く、サウナに力が入っているとのこと。

中島さん:「ですがお客様に満足して欲しいという気持ちで働いていると、相手に感謝されたときすごく嬉しい!と誰しもが思うことなんですよ。その結果をしっかりと還元できるようにしますし、ちゃんと働け!という押し付けではなく、責任を持って楽しんで働いてもらいたいというのが私の従業員の方々に対する思いですね。」

館内を案内してもらいながら個人的に感じたのは、従業員の方々の笑顔。内情はわからないのではっきり言い切れないけども、とても楽しそうに働いていました。

従業員の接客も、館内が綺麗に保たれているのもお客さんからすると、"当たり前"のこと。

そう思ってしまうせいで我々はついつい忘れてしまうのですが、接客も清掃もその会社の付加価値なんだよ。サービスと掛け合わさることでその価値は掛け算にも、時には割り算にもなってしまう。

だからこそ、その付加価値を会社が認めて評価してくれることは、そこで働く人にとってはすごく嬉しいことだよね。

広い大広間。温泉上がりに気持ちよく羽を伸ばすことができる
広い大広間。温泉上がりに気持ちよく羽を伸ばすことができる

中島さん:「利用者様のマナーという部分も、少しずつ変えていこうと現在いろいろ施策を打っています」

マナー問題。難しいよね。

・大量の飲食物等の私物持ち込み

・休憩所の場所取り

・サウナでの自分ルール押し付け

・大声でのおしゃべり

などがあり、そこを変えていきたいとのこと。

中島さん:「お恥ずかしい話、ネットの口コミにもそういったマナーについて書かれている状態です」

見かけたときに注意をするそうなのですが、一部は

「昔はなにも言われなかったのに、なんだ急に!」

という方もいらっしゃるようで、昔の運営体制と今は違うんだよということを徐々に浸透させていきたいとのこと。

要予約制の家族風呂。週末は大人気とのこと
要予約制の家族風呂。週末は大人気とのこと

ここからはささキジの個人的考えですが、まず一部の人がマナーを犯して満足する施設の運営って健全ではないよね。

飲食だろうと会社だろうとどこにでもいるんだけど、そのつもりがなくても利用者を排除しようとしちゃう方には本当に頭を悩ませることだと思う。

楽しみな気持ちで初めて来た利用者が

・場所取り

・大量の私物持ち込み

・大声での会話

・自分ルールの押し付け

みたいな現場を見ちゃったら、今後はもういかないという理由に十分なるからね。

でもね!それを厳重にぎっちぎちと管理できないのよ。会社って。

なんでかというと、そんなギチギチに管理されてたらちゃんとルールを守ってる方達の居心地が悪くなるの。数人のやばい人のためにルールを守って楽しんでいる人の満足度を犠牲にはできないのよ。

なのでちゃんと客観的に自分を見て、律するところは律しよう。

ルールの範囲内ならいくらでも楽しんでOKなんですからね!

和風風呂にある露天風呂。和風の方が広く、露天風呂に力が入っているとのこと。
和風風呂にある露天風呂。和風の方が広く、露天風呂に力が入っているとのこと。

中島さん:「より利用者様に満足していただくために、椅子やソファ。高齢者が座りやすいように座椅子なども導入しました」

変えないといけないもの、追加で導入しないといけないものはたくさんあるとのことでしたが、優先順位を決めて利用者により満足していただけるものを日々考えているんだそう。

その取り組みの一つとして導入したのがコミックリース。

人気のタイトルを揃え、現在は500冊あるとのことで、読める漫画も時期によって入れ替わるそう。

中島さん:「ゆったり漫画を読んで過ごしてもらえたらと思います。今後はもっと数を増やそうと計画しています」

とまぁ色々とお話しさせていただいたわけですが、おそらくメディアに出るのは初。

地下にある温泉の心臓部を案内してもらいました。

すごい大掛かり。こういうデカくて機械的でよくわからんやつ。男の子なんかは目をキラキラさせるんじゃないだろうか。もちろんささキジの心も煌めいている。

中島さん:「いろいろな機械があるのですが、メンテナンスが必要なものや機械自体取り替えなくてはいけないものなど温泉を維持するためのお金はかなりかかりますね」

例えばこれ。受水槽から蛇口まで水を送るものなのですが、昨年10月に取り替えたとのこと。これにより浴室のシャワーの水圧が強くなって随分お客様に喜ばれたそうです。

ささキジ:「こういったものってピンキリだと思いますが、いくらくらいかかるんですか?」

中島さん:「一概には言えないのですが、◯◯◯万円かかるというのは結構ザラな世界ですね」

やはりそうか。シャワーの水圧の話に限ってしまうけども、みんなの"当たり前"を維持する、または改善するのに◯◯◯万かかるわけですよ。

こういう裏側の話って当然知らない人のが圧倒的に多い話ですが、知ると途端にありがたみを感じる。

従業員の方々の日頃の維持管理があるからこそ、我々は安心して温泉を楽しむことができているんだね。

次は事務所へ案内してもらいました。

利用者に満足してもらうために、660円という入館料はできればキープしたい。

そこで中島さんが目をつけたのが電気料金。

中島さん:「電気の使用状況が可視化できる設備を導入したんです!導入によって節電に役立ち、電気料金を抑えることに成功しました」

その結果、基本料金で22.6%、電気使用量では18.2%の削減に成功。金額ベースで1000万弱を削減することに成功したそう。うん。とんでもねぇな。

ここまで話を聞いていて思ったことがある。中島さんの現状を変え、継続していく力がすごいということ。

本来なにかを変えるってことはとても大変なこと。それを継続・維持するなんてさらに大変なこと。

毎日いつもより5分早く起きるってだけでも大変じゃない?自分のことでさえそんなレベルなのに、中島さんは周りも環境も変えて、それを継続している。

館内にある小劇場。予約をすれば、なんとここでカラオケもできる
館内にある小劇場。予約をすれば、なんとここでカラオケもできる

中島さん:「自分は仙台からここまで通っているんですけど、それは客観的に天平の湯を見たいというのがあるからなんですね。内側に入り過ぎてしまうと本来見えるはずのものが見えなくなってしまうので」

確かに。それはすごくわかる。内側に入りすぎると

【今までも問題なかったんだからこのままで大丈夫だろう】

という気持ちから疑問に思うことがなくなってしまうことが我々には多々ある。

中島さん:「館内のBGMなどはそうですね!今まではかかってなかったんですよ。でもBGMってかかってたほうがいいじゃないですか?」

まさにその通り。今まで無かったものって、無くても"問題ない"と思ってしまうんですよね。

こういった小さな気づきを反映し、変えていく。そして継続していく。

入館料だってそうです。 企業努力で金額は変えていませんが、そのために利用者の満足度に関係しない別のところを合理的に変えまくってるんですからね。

リニューアルや入館料の維持など一年で大きく【変化】している
リニューアルや入館料の維持など一年で大きく【変化】している

その結果どうなったのかというと、記事冒頭でお話しした通り黒字化が見えている状態に。

地元の利用者だけでなく、仙台からの利用者も増えているんだそう。

中島さん:「朝10時の開館と同時に220人もの利用者様に来ていただいたときもありました。本当にありがたいですし、頑張ってくれている従業員の方々にも感謝しかないです」

現在は開館前に何十人も車で待機しているのは当たり前の状態が続いているという。

この【当たり前】を作り出すために中島さんや従業員の方々はどれだけ考え、どれだけ動き、どれだけの葛藤、悩み、苦労があったのだろうか。

想像してみると、中島さんや従業員の方々に対するリスペクトの念が押し寄せてくる。あんたたちすごいよ。本当にかっこいいよ。記事書いてて涙出そう。

外を眺める中島さん
外を眺める中島さん

中島さん:「初めは…というより今もですけど考えることは多く、大変ではあります。ただその大変さをとても楽しく感じています!これからもよりたくさんの方に満足していただけるようにいろいろな施策を打っていきたいです!」

ささキジ:「ちなみに今考えている施策ってどんなのがありますか?」

中島さん:「館内の小劇場や、交流室の有効活用ですね!ヨガやダンススクールなどの習い事ができたら面白いのではないかと思い、現在動いています」

体を動かしたら、そのまま温泉へGOできるという素晴らしい発想。

これからの天平の湯の【変化】がとても楽しみですね。

中島さん:「あ!そうだ!SNSにも力を入れたくて、今後の様々な変化を発信しますのでぜひご覧になってください」

ちゃんと告知もする抜け目のなさ。ささキジに任せなさい。

ということで天平の湯のインスタグラムがこちらになるのでぜひ天平の湯のこれからを日々追ってください!そして実際に行ってみてください!

終わりです!長文失礼しました。ついつい俺のハートが熱くなってしまいました。

施設紹介

名称:天平の湯

住所:涌谷町涌谷字中江南222

TEL:0229-43-6330

営業時間:10:00~21:00(最終受付20:30)

定休日:毎週水曜日

HP:わくや天平の湯|美肌になる日帰り美人天然温泉

instagram:天平の湯インスタグラム

Facebook:日帰り温泉わくや天平の湯

取材が得意なWebライター(遠田郡・大崎市・登米市)

宮城のローカルメディア【ミヤキジ】を運営しています。コミュニケーション能力、謎で無駄な企画力、独特な感性をフルに駆使し宮城県に関する記事を量産していています。特に"人"に焦点を当てた取材記事がめっぽう好きです。心の中でツッコミを入れながら読むと私の記事は輝きを帯びます。

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