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アレルギー専門医が警告!子どもの食生活で避けるべき超加工食品と健康的な代替案

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Grokにて筆者作成

【超加工食品とは?子どものアレルギーへの影響】

近年、子どものアレルギー疾患が急増しています。その原因の一つとして、「超加工食品」の摂取が注目されています。超加工食品とは、工場で大量生産される、栄養価が低く添加物が多い食品のことです。例えば、インスタント食品、スナック菓子、清涼飲料水、加工肉製品などが該当します。

欧米では、超加工食品の摂取量が深刻な問題となっています。アメリカでは全カロリー摂取量の半分以上が超加工食品だといわれています。日本でも、コンビニやスーパーで手軽に購入できる加工食品が増えており、同様の傾向が見られます。

超加工食品の問題点は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しがちなことです。また、砂糖や塩分、飽和脂肪酸が多く含まれていることも健康上の懸念事項です。さらに、保存料や着色料、乳化剤などの添加物が多用されていることも特徴です。

【子どものアレルギー疾患と超加工食品の関連性】

最新の研究によると、超加工食品の摂取が子どものアレルギー疾患のリスクを高める可能性があることがわかってきました。欧州アレルギー・臨床免疫学会(EAACI)のタスクフォースが行った系統的レビューでは、以下のようなアレルギー疾患との関連が指摘されています。

NapkinAIにて筆者作成
NapkinAIにて筆者作成

1. 喘息:砂糖を多く含む飲料や果糖の摂取が、子どもの喘息リスクを高める可能性があります。アメリカの研究では、果糖を多く含む飲料を週に5回以上摂取する子どもは、月に1-3回程度の摂取に比べて、喘息のリスクが約2.5倍高くなることが報告されています。

2. アトピー性皮膚炎:超加工食品に含まれる添加物が、皮膚のバリア機能を低下させ、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性があります。韓国の研究では、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を制限した食事を1週間続けることで、アトピー性皮膚炎の症状が改善したという報告があります。

3. 食物アレルギー:乳児期に市販のベビーフードを多く摂取した子どもは、2歳までに食物アレルギーを発症するリスクが高くなるという報告があります。イギリスの研究では、手作りの離乳食よりも市販のベビーフードを多く与えられた子どもの方が、食物アレルギーのリスクが高くなることが示されています。

4. アレルギー性鼻炎:炭酸飲料や人工甘味料を含む飲料の摂取が、アレルギー性鼻炎のリスクを高める可能性があります。デンマークの研究では、妊娠中に人工甘味料入りの炭酸飲料を摂取した母親から生まれた子どもは、7歳時点でアレルギー性鼻炎のリスクが高くなることが報告されています。

これらの研究結果は、子どもの食生活が健康に与える影響の大きさを示しています。特に皮膚疾患との関連では、超加工食品に含まれる添加物や保存料が皮膚のバリア機能を低下させ、アレルギー反応を引き起こしやすくなる可能性が指摘されています。

【超加工食品がアレルギーを引き起こすメカニズム】

超加工食品がアレルギーを引き起こすメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。

1. 腸内細菌叢の乱れ:超加工食品の摂取は、腸内細菌叢のバランスを崩す可能性があります。健康的な腸内細菌叢は免疫系の調整に重要な役割を果たしているため、このバランスの乱れがアレルギー反応を引き起こす一因となる可能性があります。

2. 腸管バリア機能の低下:超加工食品に含まれる乳化剤や保存料などの添加物が、腸管のバリア機能を低下させる可能性があります。これにより、本来なら吸収されないはずのタンパク質などが体内に入り込み、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。

3. 炎症反応の促進:超加工食品に多く含まれる糖や飽和脂肪酸は、体内で炎症反応を促進する可能性があります。慢性的な炎症状態は、アレルギー反応を引き起こしやすい環境を作り出す可能性があります。

4. 栄養素の不足:超加工食品は、ビタミンやミネラル、食物繊維などの重要な栄養素が不足しがちです。これらの栄養素は免疫系の正常な機能に必要不可欠であり、その不足がアレルギー反応を引き起こす一因となる可能性があります。

【子どものアレルギー予防のための食生活のポイント】

では、子どものアレルギー予防のために、どのような食生活を心がけるべきでしょうか?以下に7つのポイントをまとめました。

NapkinAIにて筆者作成
NapkinAIにて筆者作成

1. 新鮮な食材を使用する:野菜や果物、魚、肉などの新鮮な食材を中心とした食事を心がけましょう。これらの食材には、アレルギー予防に役立つ栄養素が豊富に含まれています。

2. 手作り料理を増やす:できるだけ手作りの料理を増やし、添加物の摂取を減らしましょう。特に離乳食は、市販のベビーフードに頼りすぎず、手作りのものを中心にすることをおすすめします。

3. 砂糖や塩分を控える:甘い飲み物やスナック菓子の摂取を控え、砂糖や塩分の過剰摂取を避けましょう。特に、果糖を多く含む飲料の摂取は控えめにすることが大切です。

4. バランスの良い食事を心がける:たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取しましょう。偏った食事は、栄養素の不足を招き、免疫系の機能低下につながる可能性があります。

5. 食物繊維を意識的に摂る:野菜や果物、全粒穀物などから食物繊維を積極的に摂取しましょう。食物繊維は腸内細菌叢のバランスを整えるのに役立ちます。

6. 乳酸菌や発酵食品を取り入れる:ヨーグルトや味噌、納豆などの発酵食品を積極的に摂取し、腸内環境を整えましょう。健康的な腸内細菌叢は、アレルギー予防に重要な役割を果たします。

7. 食品添加物の少ない商品を選ぶ:加工食品を購入する際は、原材料表示をチェックし、添加物の少ない商品を選びましょう。特に、乳化剤や人工甘味料、保存料などの添加物には注意が必要です。

超加工食品の摂取を完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、少しずつ意識して食生活を改善していくことで、子どものアレルギーリスクを低減できる可能性があります。特に、皮膚のバリア機能を維持するためにも、新鮮な食材を中心とした食事を心がけることが重要です。また、妊娠中の母親の食生活も子どものアレルギーリスクに影響を与える可能性があるため、妊娠中から健康的な食生活を意識することが大切です。

最後に、食生活の改善だけでなく、適度な運動や十分な睡眠など、総合的な健康管理が大切です。また、アレルギー症状が気になる場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。個々の子どもの状況に応じた適切な対応が必要となる場合もあります。

食生活を見直すことで、アレルギー疾患のリスクを減らし、健康的な肌を保つことができるかもしれません。ぜひ、この記事を参考に、ご家族の食生活を見直してみてください。

参考文献:

Berni Canani R, Carucci L, Coppola S, et al. Ultra-processed foods, allergy outcomes and underlying mechanisms in children: An EAACI task force report. Pediatr Allergy Immunol. 2024;35:e14231. doi:10.1111/pai.14231

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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