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イヤな気持ちを引きずっていませんか?引きずらないようになる方法を心療内科医が解説

将来の出来事を悪い方に考えて不安になったり、過去の出来事を許せなくてイライラしたりといったイヤな気持ちを引きずっていませんか?
イヤな気持を引きずりたくないけど、ついつい将来のことや過去のことを考えて、イヤな気持を引きずってしまうことは多いですよね!
そこで、今回はイヤな気持を引きずらないための方法を解説していきます。

不安は悪い感情なの?

将来の出来事を悪い方に考えて不安になっていることは、決して悪いことではありません。
悪い方に考えることで最悪の事態が起こった時にどのように対処したらよいのかを事前に考えることができます。
つまり、不安という感情は生き残るためには必要な感情であり、不安が高い人たちは危機管理能力(危機的状況において被害を最小限におさえる能力)が高いともいえます。

イライラは悪い感情なの?

過去の出来事を許せなくてイライラしていることも、決して悪いことではありません。
相手にこうしてほしいけど、そうしてくれない。自分のことをわかってほしいけど、わかってくれない。このような時に怒りやイライラが出てきます。
この怒りやイライラという感情は、自分の心の中にある思い(むなしさ、さみしさ、悲しさなど)に気づかせてくれます。

イヤな気持ちを引きずらない方法

不安やイライラが続いて、イヤな気持を引きずっていると、そのことがあなたの人生に悪い影響を与えてしまいます。
不安やイライラなどのイヤな感情を直接コントロールすることは難しいのですが、あなたの考え(思考)を変えることは、それほど難しくありません。
つまり、考え(思考)を変えてみることで、不安やイライラがやわらぎ、人間関係などの問題にうまく対処できるようになります。
不安やイライラなどのイヤな気持ちを以下のように整理して、現実的で柔軟な考え方を探してみましょう!

1) 状況を書き出してみる

まず、イヤな気持ちが出てきた時の状況について書き出してみましょう!
できるだけ具体的に、その状況がイメージできるように、いつどこで誰と何をしていた時にそうなったのかを書き出してみましょう。

2) 感情と考え(思考)を書き出してみる

イヤな気持が出てきた時の状況で、どのような感情や考え(思考)が出てきたのかを書き出してみましょう。

例)友達にあいさつをしたけど、無表情でそっけない返事をされてしまった状況があったとします。
Aさんは、「不快な思いをさせてしまって、嫌われてしまったかな」と思って、不安や悲しみが出てきます。
Bさんは、「あいさつくらい、ちゃんとしろよ」と思ってイライラや嫌悪感が出てきます。

・ネガティブな感情を書き出してみる

感情とは、ものごとや対象に対して抱く気持ちであり、喜びや楽しみなどのポジティブな感情と不安・恐怖や怒り・イライラなどのネガティブな感情があります。
ネガティブな感情には、ほかにも悲しみ、嫌悪、罪悪感などがあります。
このように感情は、ひとことで言い表すことができます。

Aさんの例では、感情は不安と悲しみになり、Bさんの例では、イライラと嫌悪感になります。

・感情の強さを点数化してみる

自分の感情の強さについて、全くない場合は0、想像できる最大の強さを100として、どのくらいの強さがあるのかを、それぞれの感情について点数化してみましょう!
いつも不安に思っている人でも、日によって不安の程度が変化していることに気づくことがあります。

・自動思考(パッと頭に浮かぶ考え)を書き出してみる

ある状況において、パッと(自動的に)頭に浮かぶ考えは、自動思考と呼ばれます。
不快な感情が出てきた時の自動思考を書き出してみましょう!
自動思考が、何回も頭の中で繰り返し出てくる場合には、いったん書き出してみることで、その考えが繰り返して出てこなくなったり、出てきてもその考えにとらわれなくなったりすることがありますので、書き出してみることが大切です。

3)状況と感情と自動思考を表にまとめてみる

状況、感情(強さ)、自動思考を下のような表にまとめて書いてみることをおすすめします。

4)その状況を考えなおしてみる

さきほどの表に記載したように、同じ状況でもその人(AさんやBさん)の受け取り方や置かれた立場やその時の気分によって、自動思考や感情は異なってきます。
そのため、自分の置かれた立場やその時の気分にとらわれずに、相手の視点や第三者(中立的な立場であるため、公平な立場で物事の判断ができる人)の視点で、その状況を冷静に考えなおしてみること(再評価)が重要になります。
「悪い方(ネガティブ)」に考えてしまう場合には、その状況を無理に「ポジティブ」に考える必要はなく、「ニュートラル」に考える練習をしてみましょう!

5)適応的思考(現実的で柔軟な考え)を書き出してみる

その状況を冷静に考えなおした思考は、現実的で柔軟な考えになっています。
この現実的で柔軟な考えを適応的思考と呼びます。
例えば、家族や親友がその状況を見ていたら、どのように思うかを考えてみます。

先ほどの例で、適応的思考を考えると以下のものがあります。
「なにか落ち込むような出来事があったから、無表情でそっけない返事になったのかもしれない」
「寝不足で疲れていたから、無表情でそっけない返事になったのかもしれない」

6)表に適応的思考と感情の変化を加えててみる

先ほどの状況と感情と思考の表の右横に「適応的思考」を書き加えてください。
その後、最初に書いた感情とその強さが、どのように変化したのかを適応的思考の右横の「結果」に書き加えてみましょう!
作成した表は、自動思考記録表と呼ばれるものになります。

最初のうちは、「結果」の感情の強さが、自動思考の時の感情の強さとそれほど変わらなくても大丈夫です。
表の例ではネガティブな感情が10~30低下していますが、最初のうちは1~3低下しているくらいでも、うまくできていますので、そのまま継続して書いてみるようにしましょう!

まとめ

考え(思考)を変えてみることで、ネガティブな感情がやわらぎ、イヤな気持を引きずらないで、人間関係などの問題にうまく対処できる方法について解説しました。
以下の流れに沿って、表(自動思考記録表)に記載してみましょう!

  • 状況とネガティブな感情を書き出し、感情の強さを点数化する
  • 自動思考(すぐに頭に浮かぶ考え)を書き出す
  • 状況を考えなおして、適応的思考(現実的で柔軟な考え)を書き出し、感情の強さを点数化する

ネガティブな感情が続いて、イヤな気持を引きずっていると、そのことがあなたの人生に悪い影響を与えてしまいます。
ネガティブ感情を直接コントロールすることは難しいのですが、自動思考記録表を書いてみて、続けていくことで、ストレスが減って、イヤな気持を引きずることが減ってくることが実感できますので、ぜひ実践してみてください。

心療内科専門医・総合内科専門医のよっしーです。心療内科医として20年以上、大学病院で15年以上患者さんを診察してきました。大学では教授として研究や学生の教育も行っています。より多くの人たちのお役に立てるような心と身体の情報を発信しています。健康な人にとっても病気の予防にも役に立つ効果的な治療法(セラピー)の情報やその実践法についてもわかりやすく解説しています。

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