[訃報]スパニッシュな超絶テクでジャズやロックに衝撃を与えたパコ・デ・ルシアさん逝去
スパニッシュ・ギターの名手として神技的なテクニックを披露し、ジャズやフュージョンにも大きな影響を与えたギタリストのパコ・デ・ルシアさんがなくなりました。享年66歳。
パコ・デ・ルシアさんの超絶テクなギターは、オン・タイムでボクのジャズ熱に油を注いでくれました。
その存在を知ったのは、アル・ディ・メオラのアルバム『エレガント・ジプシー』でのこと。1977年リリースのこのアルバムを、おそらく新宿のロック喫茶(たぶんサブマリンだと思う)で聴いたボクは、その圧倒的なテクニックと表現力に打ちのめされて、せっせとお小遣いを貯めてアルバム(もちろんアナログLP盤)を購入しました(当時は高校生だったので)。
アル・ディ・メオラを知ったのはその少し前。彼が参加していたツトム・ヤマシタの“GO プロジェクト”(1976年)がきっかけで、彼がチック・コリアとともにフュージョン・シーンに大きな足跡を残したリターン・トゥ・フォーエヴァーでの活動はそこから遡って知ることになります。
中学生のころからロックに興味をもっていたボクは、ギタリストでいちばん上手い人は誰なのかということを友だちと競っていて、リッチー・ブラックモア→ジェフ・ベック→ロバート・フリップというような図式を頭のなかに描きながら悦に入っていたカワイイやつだったのですが、その妄想を吹っ飛ばしたのがアル・ディ・メオラの出現でした。
ところが『エレガント・ジプシー』では、超越した存在だったはずのディ・メオラとのフォー・バース(4小節から数小節ごとに交互に行なうアドリブ合戦)で、ロックにはない独特のラインを奏でてディ・メオラを驚かせているようすが伝わってくるプレイを披露するギタリストが現われたわけです。
彼の業績はなんといっても、「アコースティック・ギターの弱点をエレクトリック・ギターが補って音楽は進化してきた」とされる1950年代から70年代までの“ポピュラー音楽界の常識”を、根本からひっくり返してしまったこと。
1980年代のスーパー・ギター・トリオ(ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエル or アル・ディ・メオラとのアコースティック・ギターによるトリオ・プロジェクト)の成功などは、その証拠として挙げることができるでしょう。
♪Mediterranean Sundance Friday Night in San Francisco
ご冥福をお祈りします。