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ダイアナ元妃とメーガン夫人の大きな違いは人に愛されているかどうか 王室ファンは王子2人の仲直りに期待

木村正人在英国際ジャーナリスト
一般公開されたケンジントン宮殿サンクン・ガーデンのダイアナ元妃像(筆者撮影)

ロスに帰ったヘンリー公爵

[ロンドン発]ダイアナ元英皇太子妃を偲ぶ銅像の除幕式に出席したヘンリー公爵(36)=王位継承順位6位=は7月2日、妻のメーガン夫人と2人の子供が待つ米ロサンゼルスに飛び立ちました。一般公開された銅像を見るため駆けつけた英王室の追っかけたちは対立するウィリアム王子(39)=同2位=とヘンリー公爵が一日も早く仲直りすることを望んでいます。

コロナ対策でイギリスへの渡航者には「レッド」「アンバー(琥珀色)」「グリーン」のレベルに分けて自己検疫が求められます。「アンバー」リストのアメリカから入国したヘンリー公爵も渡航前にアメリカで検査を受け、入国後も5日間ロンドン郊外のウィンザー城で自己隔離して、検査で陰性であることを確認しました。

6月30日に、難病の子供たちを支援する団体「ウェルチャイルド」のイベントに参加しました。英大衆紙デーリー・メールによると、ヘンリー公爵は出席者に「幸せそうに座っている長女リリベットの周りで長男のアーチーちゃんは走り回っている」と話していました。7月1日にダイアナ元妃像の除幕式に出席し、翌日にはイギリスを飛び立ちました。

英大衆紙への嫌悪感を露わにし、アーチーちゃんの「肌の色」を巡る人種差別疑惑で王室攻撃を強めるヘンリー公爵もイギリスには居辛いのでしょう。

除幕式で2人の王子が交わした言葉は

大衆紙デーリー・スターはケンジントン宮殿サンクン・ガーデンでの除幕式でウィリアム王子とヘンリー公爵が交わした言葉を読唇術で読み解いています。ヘンリー公爵がダイアナ元妃の銅像を見て「ワオ、素晴らしいじゃないか」と言葉を発すると、ウィリアム王子は「その通りだ。いい、いいね」と応じました。ヘンリー公爵は「すごい」と繰り返しました。

3人の子供に囲まれるダイアナ元妃像(筆者撮影)
3人の子供に囲まれるダイアナ元妃像(筆者撮影)

ダイアナ元妃が愛したサンクン・ガーデンも“お色直し”し、ウィリアム王子は「オー、これは立派だ」と感想を漏らすと、ヘンリー公爵も笑みを浮かべ「壮観だ」と答えました。最愛の母親の前では確執を封印してみせたものの、ボディーランゲージの専門家はヘンリー公爵がウィリアム王子と一緒に階段を下りた時「内面の緊張」が感じられたと分析しています。

ダイアナ元妃が生きていれば除幕式が行われた7月1日は60歳の誕生日でした。元妃の銅像は7月2日から無料で一般公開され、お馴染みになっている王室の追っかけさんたちも顔をそろえました。

生きていれば60歳の誕生日。ケンジントン宮殿には元妃を偲ぶ花輪が手向けられた(筆者撮影)
生きていれば60歳の誕生日。ケンジントン宮殿には元妃を偲ぶ花輪が手向けられた(筆者撮影)

午前2時半に起きて駆けつけた86歳のおっかけテリーさん

「もうあまり元気がないよ」というテリー・ハットさん(86)はこの日午前2時半に起きて午前8時に到着しました。「ダイアナ元妃はあんなに早く亡くなるべきではありませんでした。生きていてくれたらと思うと、今でもとても残念です。彼女はみんなに愛されました。彼女は特別です」と偲びました。

午前2時半に起きてやって来たというテリーさん(筆者撮影)
午前2時半に起きてやって来たというテリーさん(筆者撮影)

ウィリアム王子とヘンリー公爵の対立について「誰にでも違いはあります。私は大家族に生まれました。どんな諍(いさか)いがあっても、仲直りできました。2人もきっと仲直りできるでしょう。それが人生というものです。あなたも妻とケンカしても仲直りするでしょう。それが最善なのです」と語りました。

ダイアナ元妃像を見たテリーさんは「元妃1人の像と思っていましたが、3人の子供たちに囲まれていました。彼女の魂がそこにいるように感じました。きっと彼女も喜んで、誇りに思っているでしょう」と感想を述べました。

自宅に「ダイアナの部屋」をつくった77歳のマーガレットさん

自宅に「ダイアナの部屋」があるマーガレットさん(筆者撮影)
自宅に「ダイアナの部屋」があるマーガレットさん(筆者撮影)

自宅にダイアナ元妃を偲ぶ特別な部屋があるマーガレット・タイラーさん(77)は「彼女が生きていれば家族に深く関わったでしょう。孫に囲まれ、幸せだったはずです。それなのにあんなに早く亡くなるなんて不公平過ぎます。彼女に会って以来、ダイアナの大ファンになりました。数え切れないほどの写真や絵、雑誌、本、食器を集めました」と言います。

「時々、ファンの人が私の家を訪ねてきて“ダイアナの部屋”で彼女に思いを馳せます。彼女がパリで交通事故死する6週間前に病院で会いました。子供病棟のオープニングのためやって来たのです。写真よりかわいかったのを覚えています。美しくてとても感動しました。子供も、大人も、患者もみんな彼女を愛していました」

ウィリアム王子とヘンリー公爵の関係について「元妃はヘンリー侯爵がいつの日か国王になるウィリアム王子を支えることを常に願っていました。2人の息子に同じように愛情を注ぎ、差をつけず公平に育てました。ウィリアム王子が“国王になりたくない”と言った時、ヘンリー公爵は“その時は喜んで僕が国王になる”と答えたそうです」と振り返りました。

「ヘンリー公爵はもうアメリカに向かっているでしょう。メーガン夫人が何を考えているのか私には分かりません。私はブライトンを訪れたヘンリー公爵とメーガン夫人と握手したことがあります。ヘンリー公爵は私のユニオンジャック(英国旗)ジャケットを気に入ってくれました。2人はとても成功していました。みんな2人を愛していました」

「ヘンリー公爵とメーガン夫人は今、王室を批判しています。エリザベス英女王に対してアンフェアだと思います。女王にも4度会ったことがあるんですよ。ウィリアム王子とヘンリー公爵が仲直りすることを望んでいます。フィリップ殿下の葬式では2人はあまり言葉を交わしませんでした」

「除幕式でどうだったのか分かりません。しかし2人が幸せだとはとても見えません。除幕式では違いを脇に置きました。しかし違いが出てきています。とても悲しいです」

UEFA欧州選手権(ユーロ2020、コロナ危機で1年延期して開催)イングランド対ドイツ戦をウィリアム王子とキャサリン妃と観戦したジョージ王子についてこう語ります。「大きくなりました。スーツ姿も素晴らしかったです。もういつでも国王になれるぐらいです。チャールズ皇太子が国王になることを自覚したのは8歳の時だと言われています」

「ジョージ王子も7月には8歳になります。自分の定めにジョージ王子が気づいているかどうかは分かりません。いつの日か国王になることをウィリアム王子はジョージ王子に伝えるのでしょうか。ジョージ王子はすくすく育っています。ウィリアム王子とキャサリン妃は実に素晴らしい両親だと思います」

ダイアナ元妃を偲ぶ市民(筆者撮影)
ダイアナ元妃を偲ぶ市民(筆者撮影)

15年前にブルガリアからイギリスに移住したベビーシッター、ラティンカ・ダルマンジスカさん(48)は「私の祖国は共産主義だったので西側のことは伝えられていませんでした。だからダイアナ元妃の結婚式は見ていません。でもイギリスに来てから彼女のことを知りました。彼女が生きていればと思うと悲しくなります。2人の王子が対立しているのはいいことではありません。兄弟は助け合うべきです。家族は協力することが一番大切です」と話しました。

ダイアナ元妃はとっても「カメラシャイ(カメラの前ではにかむ人のこと)」で、メーガン夫人のように雄弁でもやり手でもなく、おカネを稼ぐことなんてとてもできない世間知らずでした。しかし人々から愛されました。ロイヤルファミリーの追いかけさんたちと話していて、ダイアナ元妃とメーガン夫人の違いに改めて気づかされました。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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