震災10年 いまだ終わらぬ余震活動 リスク回避への第一歩はリスクを知ること
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の発生から、今日でちょうど10年となります。岩手、宮城、福島の被災3県では、1万5832人が亡くなり、今も2522人が行方不明となっています(警察庁まとめ/2021年3月10日現在)。この数字を聞くと、改めて未曾有の大災害であったことを思い知らされます。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。
私は、震災発生翌年の2012年4月から、宮城県で報道に携わっていますが、震災関連のニュースは、この10年でだいぶ減りました。これは、復興が徐々に進み、普段の生活が戻りつつあることの裏返しでもあり、当然のこととも言えます。ただ、ニュースがなくなるとともに、震災自体の記憶が徐々に薄れてきているようにも思え、私も含めてですが、その点は危惧しています。
10年経っても続く余震活動
2月13日の夜、福島県沖を震源とする、マグニチュード7.3の大きな地震が発生しました。最大震度は6強。東北地方で震度6強を観測したのは、2011年4月7日(宮城県沖、マグニチュード7.2)以来でした。この地震は、東北地方太平洋沖地震の余震域内で発生した、いわゆる「東日本大震災の余震」と言われるものでした。
余震の回数は、一般的には、経過した時間に反比例して減っていくとされています。2日後には2分の1、3日後には3分の1、10日後には10分の1のような具合です。そのため、はじめは急激に回数が減りますが、時間の経過とともに、減り方はだんだん緩やかになります。
上の図は、2011年3月11日の本震以降、東北地方で震度1以上を観測した余震域内の地震(これを余震とします)の回数を年ごとに表したものです。最初の1年はガクっと回数が減っていますが、その後は減り方が緩やかになり、ここ数年は、回数にそれほど大きな変化がみられません。これが、余震がいつまでも収まらないと感じる理由と言えます。そして、今年2月のように、時々大きな余震が起こります。そうすると、その余震のさらに余震に相当する地震が起き、逆に回数が増えてしまうこともあります(2016年など)。
また、余震域で発生したマグニチュード4.0以上の地震は、震災発生前は、年平均で138回であるのに対し、震災8年後からの1年間(2019年3月11日~2020年3月11日)は175回となっています。いまだに震災前の状態には戻っておらず、地震活動が活発な状態が続いているわけです。まだまだ余震には注意が必要と言えます。
地震はいつ起きるかわからない
台風であれば、いつ、どういう進路をとって、どのくらいの強さで接近して、どのくらい雨や風が強まるのか、かなり精度よく予測できるようになってきました。ただ地震は、そういうわけにはいきません。一定の周期で繰り返し起こることはわかっていても、それが、明日起きるのか、1年後なのか、5年後なのか、10年後なのか、精度よく予測することができません。例えば、南海トラフ地震。おおむね100~150年間隔で繰り返し起こってきました。前回の地震から70年以上が経過し、切迫性が高まってきていますが、その発生期間には幅があり、いわば、いつ起きるかわからないわけです。
かといって、常に地震に怯えながら生活するわけにもいきません。普段、安心した生活を送るためにも、事前の準備をしておくことが大切です。
ハザードマップでリスクを知る
事前の準備として、ハザードマップで身の回りのリスクを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。近年は、毎年のように大雨による災害が発生し、ハザードマップの重要性が謳われていますが、ハザードマップは、風水害だけでなく、地震や津波を対象としたものも作られています。想定される地震について、自分が住んでいる地域はどれくらいの強さの揺れが予想されるのか、また、津波のリスクがあるのかないのかが示されています。
例えば、仙台市の場合、宮城県沖地震が単独で起きた場合、他の震源域と連動して起きた場合、内陸の断層による地震と、3つの型の地震を想定し、それぞれについてハザードマップが作られています。揺れやすさ(震度)、地域の危険度(建物の全壊率)、液状化予測が示され、さまざまなリスクが確認できるようになっています。
また、これとは別に、津波ハザードマップも作られ、そちらは、東日本大震災の津波到達ラインや大津波警報、津波警報が発表された時に避難が必要な地域、津波避難タワーの位置などが示されたものになっています。
まずはリスクを知ることが、その後の対策を立てるうえで重要です。ハザードマップは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」を開けば、全国の市町村のサイトに飛ぶことができ、誰でも見ることができます。
地震や津波は、風水害と比べると頻度が低く、ハザードマップも馴染みが薄いかもしれません。これを機に、一度確認しておくことをおすすめします。リスク回避のためには、まずはリスクを知らなければいけません。