日本の消費者物価指数は本当に適切な物価指数なのか
21日に発表された4月の全国消費者物価指数は、総合で前年同月比マイナス0.4%、生鮮食品を除く総合で同マイナス0.1%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で同マイナス0.2%となった。
3月に比べて総合は前年比のマイナス幅を拡大させ、生鮮食品及びエネルギーを除く総合では3月のプラス0.3%からマイナスに転じた。
総合でのマイナス幅の拡大には、キャベツ(マイナス41.7%、寄与度マイナス0.06)やリンゴ(マイナス21.4%、同マイナス0.05)などの生鮮食品も影響していた。そして、都市ガス代もマイナス6.2%、同マイナス0.06とマイナスに寄与していたが、寄与度が大きかったのは通信料(携帯電話のマイナス26.5%、同マイナス0.50) であった。
携帯電話料金の引き下げが大きくマイナスに寄与したことになるが、これに違和感はなかろうか。
日銀がどんなに頑張って金融緩和を行っても物価はビクともしない。これは日本では長きにわたり物価の低迷が続き、消費者の物価感にデフレマインドが浸透しているため、それを解き放つのが難しいためとの説明がある。本当にそれだけだろうか。
この4月の前年比というのは、コロナ禍において景気が大きな打撃を受け、原油価格は一時マイナスとなった昨年4月の比較となる。
4月29日にドイツ連邦統計庁が発表した4月の消費者物価指数速報値は、欧州連合(EU)基準(HICP)で前年比2.1%の上昇となっていた。
5月12日に発表された米国の消費者物価指数は予想も大きく上回る上昇幅となった。総合指数は前月比でプラス0.8%、前年同月比ではブラス4.2%となった。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.9%の上昇となり、1982年以来の大きな伸びとなった。前年同月比では3%の上昇となり、予想の2.3%上昇を上回った。こちらは1996年以来の大幅な伸び率となった。
英統計局が5月19日に発表した4月の英国の消費者物価指数は前年同月に比べ1.5%の上昇となっていた。3月の0.7%の上昇から伸びが2倍以上に加速した。
いやいや、日本はデフレマインドが強く、いくら昨年4月の比較でもそうそう伸びやしないとの意見もあろう。
ところが、日銀が17日に発表した4月の国内企業物価指数は前年同月比で3.6%の上昇となっていたのである。前月比で0.7%上昇した。2か月連続の上昇で、2014年9月以来、およそ6年半ぶりの高い水準となった。
欧米の消費者物価指数を見る限り、日本の国内企業物価指数のこれだけの上昇幅に違和感はなかろう。しかし、消費者物価指数には違和感が残る。
よく国内企業物価指数は川上、消費者物価指数は川下の物価指数と例えられる。原材料費などの高騰を企業努力で価格に反映させない結果、消費者物価指数は低迷しているとの解説がある。確かにそれも影響はしていよう。それでも今回の消費者物価指数が前年比でマイナスというのは、携帯電話料金という特殊要因が働いたとはいえ違和感がある。帰属家賃の問題等も指摘されているが、下方バイアスが生じやすいという特性を持っているのではなかろうか。
専門家が作り上げた指数にケチをつけるわけではないが、そもそも日本の消費者物価指数は本当に物価の実態を反映しているのであろうか、という疑問を持たざるを得ない。