日銀の金融政策正常化の動きに政治的圧力は加えるべきではない
2日に石破首相は首相官邸で日銀の植田総裁と首相就任後、初めて面会した。面会後、記者団に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」との認識を示した。
この石破首相の発言の前に、赤澤経済再生担当相が、首相が日銀による金利引き上げに前向きだと言われるのは全体の絵として必ずしも正しくないと述べていた。ただし、その一方、将来の金融政策については「条件が許せば正常化していきたい」とも語っていた。
これらを受けて日銀による早期の追加利上げは困難かとの見方が強まり、円売りドル買い圧力が強まって、ドル円は一時149円台まで上昇した。このドル高の背景には米長期金利の上昇もあった。
林官房長官は3日の臨時閣議後の会見で、石破首相が2日夜に日銀の追加利上げに慎重な発言をしたことに関連し、先立って行われた植田日銀総裁との会談では「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべきとしており、植田総裁も首相から金融政策について具体的にこうしてほしいという話はなかったと述べたと承知している」と語った。
軌道修正を図ったのか、それとも発言が意図したものと異なって解釈されたのかはわからない。しかし、石破首相自らも3日夜、日銀の金融政策について、「利上げする環境にない」とした自らの発言について、政策判断に「時間的余裕はある」とした日銀の植田総裁の認識を念頭にしたと釈明した。
そして、8日に赤澤経済再生担当相は、ブルームバーグなど報道各社とのインタビューで、日銀の植田和男総裁が政策判断に当たっては内外の金融市場や経済の状況を見極めていく必要があり、そうした時間的余裕はあると言っていると指摘した上で、「今の日銀の判断をわれわれは信じてということだ」と強調した。金融政策の具体的な手法については日銀に委ねられるべきだとも述べた。
経済財政政策担当相も兼務する赤澤氏は政府代表として日銀の金融政策決定会合に出席できる立場にある。石破首相の側近としても知られる。
日銀に対する政治的な圧力はアベノミクスによってあからさまなものとなり、それによる特に債券市場での混乱は昨年末あたりまで続いていた。しかし、今年に入り次第に政治的な圧力が緩和されてきた。
日銀は3月にマイナス金利政策と長期金利コントロールを解除した。7月には政策金利を0.25%に引き上げた。
消費者物価指数は以前として前年比2%を超えているなかにあり、追加の利上げをするような環境にあるのも確かではなかろうか。
金融政策については「条件が許せば正常化していきたい」とも赤沢氏は語っていた。その正常化はまだ道半ばであり、その動きに対し政治的な圧力を加えることは控えるべきである。