大学授業料の中長期的変化を確認する
上昇続く大学授業料
進学率の上昇や授業料の引き上げ、当事者や保護者の負担など様々な観点で注目を集めている大学授業料。その中長期的変化を総務省統計局の小売物価統計調査における公開値から確認していく。
東京都区部の小売価格を参考に、1950年以降の年次データ、2015年分は直近の月次となる4月分を取得して適用し、精査する。対象となるのは東京都の大学授業料のうち「国立・昼間部・法文経系」「公立・昼間部・法文経系」「私立・昼間部・法文経系」の年間授業料。
なお理系は国公立では文系と同じ、私立は数割増しとなる。また入学金の相場は年間授業料の数割程度なので、留年が無いと仮定した場合、年間授業料を4倍強すれば、大よそ大学における総計授業料などの額を算出できる。
大学授業料は世間一般のイメージとほぼ同じ金額推移を示している。そしてどの種類の大学でも日本が高度経済成長を始めた1970年代まではほぼ横ばい、あるいはゆるやかな上昇だったものが、それ以降はやや上昇率を高め、右肩上がりの様相を呈している。20世紀末になると上昇も緩やかなものとなるが、私立はそれ以降も上昇し続け、国公立は同額を維持することになる。記録の限りでは2003年以降10年以上同一価格を維持している。
ちなみにもっとも古い記録として残っている1950年時点では国立大学の年間授業料は3600円、私立でも8400円。これが直近の2015年ではそれぞれ53万5800円、74万5552円にまで跳ね上がっている。単純に倍率試算をすると149倍・89倍となる。
物価水準の変動を考慮してみると
これらはそれぞれの年における金額を示したものだが、当然物価水準は異なる。そこで消費者物価指数と連動させて価格を算出することによって、より正しい価格価格の実情を推し量ることにする。
具体的には各年の授業料に、それぞれの年の消費者物価指数を反映させた値を試算することにした。直近2015年の値を基準値として、各年の値を再計算した結果が次のグラフ。つまりそれぞれの年における物価が2015年と同じ水準ならば、どの程度の金額になるのか、その推移を示している。
消費者物価指数を考慮しない最初のグラフと比べても、形の上では大きな変化が無い。これは各授業料の上昇率が大きく、物価の上昇をはるかに上回る割合であるから。物価を考慮しないグラフと比べていくぶん勾配が緩やかになってはいるものの、私立では高度経済成長期以前から一律な右肩上がりを示す一方で、国公立では高度経済成長期まではむしろ下がっている動きすら見受けられる。
そして1950年における現在の物価に換算した上での大学年間授業料は、国立で2万9000円、公立で4万1000円、私立で6万9000円。月次にするとそれぞれ大よそ2400円・3400円・5700円。この程度の金額ならそれこそ1日のアルバイト料金で満たせる額であり、当時大学生だった人たちが「自分達は大学授業料位は自分の手で稼いだものだ」と語っても、特に不思議ではない。1965年当時で換算しても4100円・5100円・1万8000円で済む。一方で2015年時点ではそれぞれ4万5000円・4万3000円・6万2000円。かなりハードな額には違いない。そして今金額は授業料のみの話。他に入学金や教材費など多種多様な学費が必要となる。
少なくとも金額負担の観点に限れば、大学はよりハードルの高い場となっていることは間違い無い。
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