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挑戦は豊島竜王ら3名の争い&羽生九段が残留に向けて前進ー第79期A級順位戦ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 21日の対局をもって、第79期名人戦・順位戦A級は7回戦までの対局を全て終えた。

 挑戦争いは斎藤慎太郎八段(27)がトップを走り、豊島将之竜王(30)と広瀬章人八段(34)が追う展開に。

 残留争いは羽生善治九段(50)が直接対決を制して残留へ大きく前進した。

 残りは2戦。挑戦争いと残留争いについて解説する。

挑戦争い

挑戦争いは3人の争いに
挑戦争いは3人の争いに

 表のメンバーは全員7回戦を勝利し、挑戦争いはほぼこの3名に絞られた。

 斎藤八段は7回戦で佐藤康光九段(51)に完勝。いまの充実ぶりを表す素晴らしい内容で1敗をキープした。

 8回戦は稲葉陽八段(32)と対戦する。相手は残留をかけて気合い充分で臨んでくるだろう。直近の対戦でも敗れており、挑戦へ向けて試練の一戦だ。

 7回戦で豊島竜王は三浦弘行九段(46)に、広瀬八段は糸谷哲郎八段(33)にそれぞれ快勝して2敗をキープした。

 両者は最終9回戦での対戦が決まっている。

 8回戦で斎藤八段が勝ち、豊島竜王と広瀬八段が敗れると斎藤八段の挑戦が決まる。

 一方、挑戦争いでは順位が関係ないため、同星で終わるとプレーオフになる。

 斎藤八段が8回戦で敗れると、直接対決の関係もありプレーオフの色が濃くなってくる。

 追う豊島竜王は調子を上げている。また広瀬八段も年が変わって復調気味だ。

 両者が敗れて8回戦で挑戦が決まる可能性は低いとみる。

 最近の充実ぶりからは斎藤八段が連勝する線も濃いが、一つでも落とすとプレーオフにもつれこみそうだ。

残留争い

残留争いは3名の争いか
残留争いは3名の争いか

 21日に羽生九段ー稲葉八段の直接対決があり、完璧といっていい内容で羽生九段が制して残留へ近づいた。

 7回戦で表のメンバーで勝ったのは羽生九段のみ。ここ一番での強さが際立つ。 

 羽生九段は8回戦で自身が勝つか、糸谷八段か稲葉八段が負けると残留が決まる。

 羽生九段のA級での動向にファンの関心は強い。今期の残留はほぼ大丈夫だろう。

 8回戦は挑戦権を争う広瀬八段との対戦となる。存在感を見せつける一戦となるか。

 残留へ一番厳しい状況なのは三浦九段だ。自身が残り2戦を連勝して、菅井竜也八段(28)が連敗するより道はない。

 この二人は8回戦で顔を合わせる。三浦九段としては勝てば最終戦へ望みをつなげられる。

 菅井八段は勝てば残留へ大きく近づく。残留争いの大一番といえよう。

 羽生九段に敗れた稲葉八段も残留に向けて崖っぷちだ。8回戦に敗れて菅井八段が勝つと降級が決まる。相手は挑戦を争う斎藤八段だ。今期は順位戦以外も星が伸びず、稲葉八段は厳しい戦いが続いている。

 勝って最終戦での糸谷哲郎八段(32)との直接対決に望みをつなげられるか。

ラス前

 ラス前(最終戦の一つ前である8回戦の通称)は2月3日(水)に一斉に行われる。

 挑戦と残留の行方を大きく左右する稲葉八段ー斎藤八段。

 残留争いの直接対決となる三浦九段ー菅井八段。

 この2つの戦いに注目が集まりそうだ。

 日本将棋連盟より、コロナ禍の影響で大盤解説会を開催しない旨がアナウンスされている。

 風物詩ともいえる解説会が開催されないのは残念だが、Web上の各メディアで中継が予定されているのでファンの皆様にはこちらでお楽しみいただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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