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総売上に占める出版物取り扱い売上比率は0.8%…コンビニの出版物販売額をさぐる(2023年版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
コンビニでの出版物の売上はどのような動きをしているのだろうか(写真:アフロ)

コンビニの店舗数は増えるが出版物売上高は減る一方

以前はコンビニ(コンビニエンスストア)では欠かせない存在だった雑誌をはじめとする出版物も、昨今では肩身の狭い立場に置かれるようになった。費用対効果の問題などから、配置場所が狭くなったり、イートインコーナーに代わられたりする状況も多々見受けられる。その出版物とコンビニの関係について、日販による「出版物販売額の実態」最新版(2023年版)のデータを基に、コンビニ業界全体と印刷物の関係を数字の上で確認する。

まずはコンビニにおける出版物売上高とコンビニ店舗数。店舗数を併記したのは、単に売上だけの推移では「店舗数の増減も売上と関係するので、コンビニにおける出版物のポジションの変化がつかみにくい」から。コンビニ店舗数は増加傾向にあるが、それに反してコンビニでの出版物の販売額は減少の一途をたどっている。ただし2016年度以降では店舗数は頭打ち。これは大手フランチャイズによる寡占化に伴い、統廃合が行われているのが主な原因。

↑ コンビニの店舗数とコンビニにおける出版物売上高
↑ コンビニの店舗数とコンビニにおける出版物売上高

店舗数は2004年度以降、一度頭打ちとなるが、2008年度に再び増加に転じ、2010年度のイレギュラーをのぞけばその動きは2015年度まで続いた。2010年度の減少はam/pmが最終的にファミリーマートに合併した影響が大きい。昨今では2015年度をピークに店舗数が頭打ちとなっているが、これは大手コンビニによる他の中小コンビニの合併に伴う統廃合が影響している。

一方で出版物の売上高は2003年以降は漸減傾向を見せている。これについては多様な原因が考えられるが、

・減少開始時期がインターネットやモバイル端末の本格的普及時期と重なるため、時間を潰すためのツールとしての「コンビニでの雑誌(特にファッション誌や週刊誌、コミック廉価版など)」の立ち位置がインターネットやモバイル端末に奪われている。

・家計単位での雑誌販売額の減少。

・コンビニで販売される機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連など、関連雑誌業界不調(質の低下、刊行数の減少)。

・コンビニで販売されるタイプの雑誌における付加価値や情報そのものの陳腐化。雑誌が最新情報を取得するルートではなくなりつつある。

・コンビニにおける利用客の消費性向の変化(お弁当などと一緒の「ついで買い」が出版物からスイーツやフライヤーアイテムに変化しつつある)。

・成人向け雑誌の販売スペース縮小、取り扱いの中止。

などが挙げられる。いずれも「単独」の理由としては弱いが、複合するものであれば昨今の動向に対する理由としては、十分納得はできる。コンビニで販売される出版物の具体的な種類別販売動向の推移が分かれば、列挙した推測のいくつかの裏付けはできそうだが、公開資料の限りでは、確認することはかなわない。

なお直近年度では前年度比でマイナス20.44%と大幅減を示している。この減少幅は値が確認できる2001年度以降で最大のもの。この原因については不明だが、【日販、コンビニ流通から撤退】との報があった。「日販では昨年末から今年1月にかけて、このコンビニ配送中止の件を大手出版社に〝相談〟しており」とあり、これが一因かもしれない。なお別の報によると、日販の大手コンビニへの雑誌配送は2025年初めで取りやめとなり、トーハンが引き継ぐ見込みとのこと(【出版取次の日販、コンビニ雑誌配送を25年初めに取りやめ…書店配送への影響に懸念も】)。

コンビニの売上全体に占める比率も減少傾向

店舗数と総店舗の売上高が確認できたので、単純計算ではあるが「1店舗あたりの出版物売上高」の算出が可能となる。

↑ コンビニの1店舗あたり出版物売上高(万円)
↑ コンビニの1店舗あたり出版物売上高(万円)

全体額同様、2003年以降は漸減していることが改めて分かる。2013年以降は減少度合いがやや大人しくなった感はあるが、それでも減っていることに変わりはない。

他方コンビニそのものの総売上高(出版物も含めた全物品・サービスを合わせた売上)はおおよそ漸増している。

↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの売上高(ローソン統合報告書より、兆円)
↑ コンビニ業界全体に占める上位チェーンの売上高(ローソン統合報告書より、兆円)

結果として、全売上に占める出版物の売上比率も大きく下がることになる。全体額が増えて、対象額が減れば、その対象額の全体比率が減少するのは当然の話。

↑ コンビニの総売上に占める出版物取り扱い売上比率
↑ コンビニの総売上に占める出版物取り扱い売上比率

雑誌をはじめとした出版物そのものの媒体力、集客力が低下しているのは否めず、場所の効率的利用が徹底されるコンビニにおいて、出版物の取り扱い比率が減るのも当然の結果。それにしてもこの下落ぶりは驚くべきもの、としか評しようがない。直近年度ではついに、節目となる1.0%を割り込んでしまった次第である。

2022年分のデータでは、コンビニの売上高の1/125にまで割合を減らしてしまった印刷物販売。週刊誌などの価格はむしろ上昇気味で、付録のある雑誌(もちろん価格はお高め)の増加も併せて考えれば、「売上額」ではなく「冊数」では、上のグラフ以上の急降下を形成しているのは容易に想像できる。一部では復権の動きも見られる中で、今後出版物がコンビニにおいてどのような意味合い、存在価値を示していくのか。気になるところではある。

■関連記事:

【雑誌を買う場所どこだろう、大型書店にコンビニ、そして】

【戦後の雑誌と書籍の発行点数をさぐる】

(C)日販 ストアソリューション課「出版物販売額の実態2023」

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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