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ニューノーマル時代の皮膚疾患治療 - コロナ禍でどう変わった?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【コロナ禍による皮膚科受診の変化と疾患への影響】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは生活に大きな影響を与えました。皮膚科領域では、受診患者数の減少や治療の遅れなど、様々な変化が起きていました。

まず、COVID-19の流行により、皮膚科への入院患者数が大幅に減少しています。これは、感染予防のための社会的距離の確保や、移動制限、ロックダウンなどの影響が大きいと考えられます。また、メラノーマなどの皮膚がんの新規診断数も減少傾向にあります。

パンデミック下でメラノーマと診断された患者は、より高齢で、予後不良因子(例えば、腫瘍の厚さ、潰瘍の有無、細胞分裂数など)を有する傾向にあります。これは、進行したメラノーマの患者は、医療機関への受診を控えることができないためと推察されます。

【コロナ禍での皮膚疾患治療の変化】

次に、COVID-19パンデミック下での皮膚疾患治療の変化について見ていきましょう。乾癬(かんせん)患者に対する生物学的製剤による治療に着目した研究によると、IL-17やIL-23をターゲットとした製剤が、TNF-αを標的とした製剤よりも有効であることが示唆されています。

これは、IL-23やIL-17が、COVID-19と乾癬の両方の病態に関与しているためと考えられます。また、乾癬の悪化により、IL-17を介した免疫応答が亢進し、COVID-19の重症化リスクが高まる可能性もあります。したがって、この研究は、パンデミック下で乾癬患者に対して生物学的製剤を選択する際の重要な指針になると言えるでしょう。

【コロナワクチンと皮膚疾患の関連性】

最後に、COVID-19ワクチンと皮膚疾患の関連性についてお話しします。実は、COVID-19ワクチン接種後に、自己免疫性水疱性疾患(AIBD)や慢性特発性蕁麻疹(CSU)などの免疫関連皮膚疾患の新規発症や再発のリスクが高まる可能性が指摘されています。

特に、mRNAワクチンとの関連性が示唆されています。皮膚科医は、これらの疾患の患者さんを診察する際、ワクチン接種歴を確認することが大切です。ただし、大多数のAIBD患者さんは、ワクチン接種の影響を受けておらず、症状が悪化した場合でも重篤な副作用に至ることは稀です。

以上、COVID-19パンデミックが皮膚疾患の発症、進行、診断、治療に与える多面的な影響について概説しました。皮膚科領域でも、感染予防対策の徹底はもちろん、適切な診断と治療の提供、ワクチン接種後の経過観察など、With コロナ時代に求められる対応があります。皆さんも、自分の皮膚の健康状態に気を配りつつ、必要に応じて皮膚科を受診することをおすすめします。

参考文献:

Huang, H., Guo, Z., Chen, D. and Deng, G., 2024. Editorial: The impact of the COVID-19 pandemic on dermatology patients: diagnosis, treatment, and prognosis. Frontiers in Medicine, 11, p.1418722.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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