【画像あり】森友文書改ざん、削除部分から読み解く
学校法人・森友学園との国有地取引に関する決裁文書の改ざん問題(政府側は「書き換え」と主張)で、財務省は12日、調査結果を発表。計14件の決裁文書が改ざんされていたことが明らかになった。「森友文書」の削除部分から、一連の動きを追った。
〇森友文書の削除部分―国会議員らの関与
筆者が注目したのは、「特例承認の決裁文書(2)」など、改ざんが明らかになった森友文書にある、時系列の「これまでの経緯」だ。これらから国会提出時に削除された部分を抜粋すると、まず、平成25年8月13日(原文の表記はH25.8.13)、
とある。これに先立ち、森友学園側は、財務省・近畿財務局に接触したが、これ以後、本件は、「鴻池祥肇議員の陳情」と文書の中で記されるようになる(国会提出の文書では削除)。
〇安倍総理夫人との写真を提示
続いて、平成26年4月28日の記述として、森友学園から近畿財務局に以下のような要望があったのだという。
そして、この要望と共に、文書中に書かれていたのが、以下のくだりだ。
昭恵夫人との写真が功を奏したのか、この後の平成26年6月2日、森友学園側の要求を近畿財務局が受け入れた記述がある。
〇貸付料を値切るのに、総理夫人や政治家達を利用
この時系列表で、昭恵夫人の名前がもう一度出てくるが、それは、平成27年1月9日、近畿財務局が国有地の貸付料の概算額を、森友学園側に伝える前日のことだ。
さらに、平成27年1月29日に平沼赳夫衆議院議員秘書が財務省に、同2月17日に鳩山邦夫衆議院議員秘書が近畿財務局に、「近畿財務局から森友学園に示された概算貸付料が高額であり、何とかならないか」とそれぞれ働きかけていたことも記述されている。
だが、財務省も抵抗したようだ。森友学園の交渉は一時、暗礁に乗り上げたようだった。
〇「軟弱な地盤」だとして値下げ交渉
そこで森友学園側が主張したのが、「地盤の弱さ」だ。
興味深いのは、財務省側は、地質調査会社に意見を求め「特別に地盤が軟弱であるとは思えない」との回答を得ていながら、貸付料や将来の売却価格を評価する上で、森友学園側のボーリング調査の結果を“考慮することとした”*という部分だ。
*森友文書「特別会計所属普通財産の処理方針の決定について(平成27年4月28日)」より。
そして、平成27年4月28日、財務省側は“再評価に基づく賃貸料により、見積もり合わせを実施”したと記述している。
〇「安倍晋三総理大臣」「日本会議」の記述が「特例承認の決裁文書」に
異様さを感じさせるのは、平成27年4月28日の財務省側と森友学園側の見積もり合わせの二日後、同30日付けの文書「特例承認の決裁文書(2)」だ。この文書は、籠池泰典氏を以下のように記述している。
さらに、昭恵夫人や政治家らの講演、視察についても列記されている。
*原文では、「上田」とミスタイプ。
〇「廃棄物の発見」で、国有地を買い取り
その後、森友学園側は、校舎建設工事に伴い、地中から「大量の廃棄物が発見された」と主張。財務省側は、“学園側の提案に応じて、鑑定評価を行い売却価格の通知を行うこととした”と記述している(森友文書「特別会計所属普通財産の処理方針の決定について(平成28年6月4日)」より)。これに先立つ、森友文書「有益費支払いに関する三者合意書の締結について(平成28年3月29日)」では、地下から発見されたとする撤去にともなう有益費を国が森友学園側に支払うことで合意している*。
*本文書の中、細かいゴミを撤去すべきかで“森友学園側との協議すべき問題が残っている”と書かれているのも興味深い。
こうして、森友学園側は、最大6億円過剰な値引額(会計検査院の試算)で国有地を取得できることになり、平成28年6月10日、売り払い申請書と、支払いを10年延納する申請書を、提出したのだ。
〇真相追求の必要性は、ますます高まった
一連の、改ざんされた「森友文書」の削除部分を読むと、財務省側は、森友学園への国有地売却の過程で、控えめに言っても政権やそれに連なる権力を意識し続けていたことが見て取れる。また、それこそ、野党の国会議員や有権者に、財務省が隠したかったことではないのか。公文書が改ざんされ、国会でも改ざんされた情報で、審議が行われるということは、まさに民主主義の根幹を揺るがすものだ。今回の財務省の調査結果により、なぜ、このような深刻な事態となったのか、真相追求の必要性がますます高まったと言えよう。
(了)