【日野市】繰り返し思い出す特別な日になる”ル ラパングルマン”。食ベることは生きること。
こんにちは♪ 東京都の"ど"真ん中で日野愛を叫ぶ、地域ライターのひのさんぽです(^^)
月一でお届けしている【祝☆ひので迎える周年祭 〜歴史と魅力を再発掘〜】シリーズ。今回は、フレンチ・イタリアン・スパニッシュ・ブラジリアン・そして和食etcと世界の食を極めたシェフ歴約40年という尾上シェフが手掛ける「ル ラパングルマン」を深堀りします!
「ル ラパングルマン」ってどんなお店?
日野台の緑橋交差点付近にある「ル ラパン グルマン」は、大切な人と過ごすかけがえのない特別な日に彩りを添えてくれるようなお店。
日野市でお店を始める前は、30年以上多摩市のレストランのオーナーシェフを努めていた尾上シェフですが、多摩市のレストランを閉店する際、一時は引退も考えたそう。「またあの味を」と願う声も多く、「ル ラパン グルマン」としてその味をつなぐべく2018年8月からここ日野市へ。(※お店のスタートは11月)
内装費を抑えるため、店内の片付けや内装はほとんど自分たちの手で行ったそうです。
料理人の顔を持ちながら、二足のわらじとしてかつてはアンティーク雑貨の貿易も行っていたこともあるという尾上シェフ。
店内に飾られている味のあるヴィンテージの雑貨は、そこにずっと存在していたかのようにこの空間に馴染んでいます。
ひときわ目を引くこの大きな時計もその一つ。映画のワンシーンに出てきそうなお店です。
ジビエ料理も味わえる「ル ラパン グルマン」
店名の「Lapin(ラパン)」はフランス語でうさぎ。 「Gourmanad(グルマン)」はグルメ、美食家、食いしん坊という意味。
店名にもなっているウサギをはじめ、「ル ラパン グルマン」では他では滅多にお目にかかれないようなジビエ料理を味わうことができます。
「ジビエは狩猟で得る野生動物というのがベース。一方、日本では食肉用として畜産している牛・豚・鶏が基本。自然の中で駆け回り、自分たちで食べるものを探す野生の動物と、決まった場所で決まった餌を食べる畜産の動物は大きく違う。
ジビエは独特のくさみがあると思って敬遠している人も多いが、ブルーチーズが好きな人もいるように、逆にそこが好きという人もいる。
処理の仕方や調理の仕方でそういった独特のくさみのない本来の美味しさを味わうことができるし、熟成させることで敢えてそのくさみを出すこともできる。色んな肉があるんだという味わいの違いを楽しんでほしい。」とジビエについてお話してくれました。
「料理は相性が大事。」と語る尾上シェフ。特にジビエは、その動物が何を食べて育ったのかということを考え、その動物が食べたものを使うことで素材とのマリアージュが深まるのだとか。こちらはフルーツのプラムを使ったソースで煮込んだウサギ。
「相性が大事なのは、人間も一緒ですね。」とおしゃべりが弾む親しみあるシェフの人柄も魅力です。
ウサギは鶏胸肉に近いような色味の淡白ですっきりとした味。プラムの甘みあるこってりしたソースとよく合います。
間に骨があり、どうやって食べるのが正解なのか、テーブルマナーがわからず困惑していると「手で骨を掴んでかぶりついて食べてOK。本場のフレンチでもフィンガーボールを出すことがある。」と、優しく笑いながら教えてくれました。
「コース料理は食べたいけど、マナーに自信がない。」という方もホッとできるのではないでしょうか。
「今日は伊豆のシカ」と自ら仕入れもしているシェフは一つ一つの食材の説明も丁寧です。
シカつながりで、日野市が舞台になっているアニメ”しかのこ”の話へ。”しかのこ”を知らないというシェフに、一生懸命「しかのこのこのここしたんたん」がどんなアニメなのかを説明しようとするのですが、これが非常に難しい。
結局、「カオスなアニメです」と微妙な説明しかできませんでした。どのように説明するのが正解だったのか、今でも答えが見つかっていません。
シカは見た目も味もまるで上質な牛肉。柔らかいシカ肉にマスタードソースがアクセントとなる逸品。ジビエは苦手という方にもぜひ挑戦してほしいです。ジビエの印象がガラリと変わりますよ。
シェフ曰く、ジビエの中でもその種類によっては初心者向けから上級者向けのものまであるそう。上級者向けは「ハト」らしく、イメージはレバーに近いのだとか。
「ル ラパン グルマン」のリーズナブルな価格への思い
「ル ラパン グルマン」でコース料理を食べたことがある人はもちろんご存知でしょうが、本格的なフルコースを「え? こんなにリーズナブルなの?」という価格で提供しています。
コース料理なので、日常使いのレストランとは言えない「ル ラパン グルマン」ですが、特別な日のために多くの人が頑張れば手が届くような価格設定になっています。
我々にとっては非常に嬉しいお値段ではあるのですが、なぜそんなことができるのか、その理由を突っ込んで聞いてみました。不躾な質問にもかかわらず、お答えいただきありがとうございましたm( _ _ )m
まずは、完全予約制(※一部当日でも可能なコースあり)でフードロスを出さないこと。そしてシェフ一人で仕入れから仕込み、調理を行うというワンオペを奥様にも手伝ってもらいながら行うことで人件費を抑えていること。駅からも遠く、人通りが少ない場所にあるため賃料が安いという部分もお話していました。
「プロポーズをしたいから。」と、コース料理を予約をしてくれたお客さんのエピソードを交えながら、「手間はかかっても本当に美味しいものを食べてほしいし、一生に一度の大切な日にル ラパン グルマンを選んでくれたなら、こんなに嬉しいことはない。」と言います。
「特別な日だから奮発しよう!」という気概もわかりますが、一人前何万円もするようなコース料理は、お財布事情が気になって心から楽しめないかもしれませんよね。
今一番人気でおすすめのコースは、事前予約をすればワインも1本つくという全9品の「夏のスペシャルフルコース」だそう。ボトルワインも付いて本格フルコースを二人で12,800円(税込)で味わえるのです。
「長く続けてきたお陰で、人生の節目節目に足を運んでくれるお客さんがいる。それはとても幸せなことだと感謝している。」と噛みしめるようにお話しされたことが印象的でした。
尾上シェフが伝えたいこと
奥様と2人で「ル ラパン グルマン」を切り盛りされている尾上シェフ。今後、シェフのノウハウを引き継ぐ料理人を育てることを考えているのかとお聞きしたら、これまで尾上シェフのもとで修行された方はすでに5人もいるそう。みんな今も料理の世界にいるのだと、嬉しそうに教えてくれました。
勉強熱心な尾上シェフです。「生きることは食べること」と食を大切に思い、受け継がれてきた伝統を守り、食の大切さを弟子の皆さんへ受け継いだのでしょうか。
「教えるというか」という一言を添えて、「同じレシピで同じように作っても、作る人によって全く別物になる。自分は5人のシェフに自分が学んできたことや知っていることを見せたが、彼ら彼女らはそれをベースに自分だけの味を追求し、それぞれの道で頑張っている。」と目を細めてお話していました。
「プロの料理人はもう5人もいる。自分はこれから子ども達に”食”のことを教えたい。料理は難しいことではなく、簡単で楽しいことだと伝えたい。」のだと。
これまでも地元の中学校の職場体験を積極的に受け入れたり、食の大切さや面白さをプロだからこそできる知識と経験を元に伝えてきたそう。
「アイスだって生クリームだって家にある材料であっという間にできる。お腹が空いたら自分で作ればいいんだから」というシェフに、「アイスは買っちゃうし、生クリームを泡立てるのは正直億劫...」というお母さんインタビュアー2人を前に、「じゃあ見せてあげるよ。」と、なんと目の前で生クリーム作りを実践してくれました。
材料はスーパー等でも手に入る紙パックに入った生クリームと、砂糖、そしてレモン。レモンは果汁タイプでもOKだそう。
生クリームに砂糖を入れてスプーンで混ぜ、そこにレモンを絞ってスプーンで少しかき混ぜるとなんとあっという間にホイップクリームに!
これにはびっくり。泡だて器もいらないし、わずか数分(いや、数十秒?)でできるので小さな子どもでも簡単に作れそうです。味はレモンの酸味がほんのり爽やかに広がるヨーグルトのような味でとっても美味しい。フルーツに乗せれば豪華さもプラスになります。
「共働きの家庭も増えたし、震災の不安もつきまとい、いつ何時何が起こるかわからない状況にもある。子どもが自分一人でも、そこにあるもので食べることができるということを伝えたい。世界各国の食を研究してきたプロだからこそ、沢山の引き出しがある。」とのこと。
「全員が料理のプロになる必要はない。だけれども、生きるということは食べること。」コンビニや即席麺など簡単に食べるものが手に入る時代だからこそ、自分で作るという楽しみも伝えていきたいのだそう。
おまけのマル秘情報をあと2つ。
実はグラフィックデザイナーをしていたという経験もある尾上シェフ。メニューはすべてシェフがデザインしているのです。「チラシデザインのコストもかからないからね」と、リーズナブルな理由がここにも一つ隠れていたのです。
そして、先ほど書いたシェフの5人の弟子の一人は、なんと日野市でイタリアンレストランをされているんですよ♪ どこのお店かって? それはまた、これからの周年祭特集記事で紹介する日をお待ち下さい(^^)
ル ラパン グルマン
東京都日野市日野台2丁目40ー12
TEL:042-843-2116
営業時間:11:30〜14:00、18:00〜22:00
定休日:不定休