高齢者による犯罪実態を公的資料で確認する(2014年)
高齢者人口の増加と共に、高齢者が犯罪被害者になる事案が目立つようになった。それと共に高齢者が犯罪の加害者となる話も見聞きする機会が増えたとの話もある。その実情を警察庁の公開資料「平成25年の犯罪情勢」などから確認していく。
まずは検挙人数における把握。高齢者(65歳以上)による検挙人数の推移と、人口10万人あたりの検挙人数の推移を示したのが次のグラフ。
検挙人員数は2007年以降はほぼ横ばいで推移。高齢者人口が増加している実態を合わせ考察すると、比率的には減少傾向にあると見て良い。実際、10万人あたりの検挙人員も2007年以降、わずかずつではあるが減少している。さらに最新の2013年分に限れば、窃盗犯をはじめとした総検挙人員も大きく減り、また10万人当たりの検挙人員も減退している。
ただしこの類の事例の常として、発生した件数そのものにも重点を置く必要がある。比率が減っているとはいえ、高齢者だけでも年5万件近い検挙数があり、それは2001年と比較すれば2倍強もの増加に違いない。
また「窃盗犯」(物品の盗取)について、件数、そして比率が増加している点にも注目したい。これは多分に万引きによるところが大きい。ちなみに万引きは窃盗犯の一要件であり、万引きとて窃盗には違いない。
ここ数年の傾向としては検挙数全体が横ばいで推移し、その中で「窃盗犯」の人員が増加している。当然全検挙数に占める比率も増加することになる。さらに直近2013年では総数・窃盗犯の人員共に減っているが、窃盗犯比率は上昇。窃盗犯の減り方が緩慢であることが分かる。
2006年までは窃盗犯比率も減少していたが、検挙数全体が横ばいに転じた2007年以降増加に転じ、2013年では3/4近い73.7%が窃盗犯で占めらている。シンプルな表現をすれば、警察に捕まった高齢者の4人に3人は窃盗犯という実態が確認できる。
高齢者の万引き行為の背景は中堅層までのそれとは異なる場合が多く、多分に孤独感や生活苦がトリガーとなっている。社会構造の全般的な変化が無い限り、今後も高齢化社会の進展と共に、万引き、そしてそれにより底上げされる窃盗犯の比率は上昇を見せる。行政側、特に地域社会を包括する自治体レベルで、発生事由を見極め、多方面からの状況改善施策が求められよう。
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