テレビとケータイ、ながら状況の実態を探る
機動性が高く情報の入出力に長けた携帯電話と、不特定多数の人に向けて情報発信を行う影響力の高いテレビ。この2つのメディアの連動性が注目されている。その利用実情を、博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2015年8月18日に追加資料を発表した「メディア定点調査」(2015年1月から2月に郵送調査方式で実施。有効母体数は2504件)の公開資料から確認していく。
持ち運びが容易な携帯電話と、屋内における娯楽の王様なテレビとの間には、相性に関するさまざまな分析や期待がなされている。テレビが一方向性のメディアなことから、双方向性の機能を持つ(インターネットへアクセスできる)携帯電話と同時に利用してもらうことで、疑似的な双方向性のメディアへと飛躍できるからだ。また利用機会が増えている携帯電話の波に乗り、テレビの勢いが再加速化される期待もある。
次以降に示すのは、そのテレビと携帯との連携的な行動をどの程度しているかの実態調査。まずは携帯電話、さらにはタブレット型端末を操作しながらテレビ視聴をしているか。操作の内容は問われていないので、単に両者を同時利用しているか否かの話。
全体では6割近くが利用している。また1/3は事実上毎日利用していることになる。世代別では20代がピークだが30代までは7割超を維持し、5割前後は毎日の利用。40代を超えると減少が明確化する。女性はまだ相応に使っているが、男性は3割を切る。「30代までは7割から8割が携帯電話などを操作しながらテレビを観ている」との事実は、ある意味驚異的に違いない。
また男女別では女性の方が利用度合いが高い。これは携帯電話やテレビそのものの利用性向において、女性の方が高いのが主要因。
続いて連動性の具体的な行動内容。一番よく使われるであろう方法としては、携帯電話経由のインターネットへのアクセスで、調べものをすること。番組に登場した分からない単語、気になる商品名、目に留まったお店の場所、これまではテレビのみの視聴の場合、良くて雑誌や辞書で調べる、大抵は「分からないからいいか」「メモしておいて後で調べよう」程度だったのが、即時に追加情報を得られることで、テレビの内容への興味関心が一層深まることになる。
ほぼ毎日行う人は多くて2割強にまで減るが、相応に行っている人は30代までは6割強を維持する。しかも10代から20代の利用率が高く、7割近い値を示す属性もある。「ケータイで調べながらテレビ観る」とのスタイルは、男性では40代まで、女性では30代までは、半ば当たり前のスタイルのようでもある。
情報を調べるのは利用者自身の行動で収束するが、そこからさらにテレビと携帯電話の連動性を知ることができるのが、テレビの内容で思ったことなどをソーシャルメディアに書き込むことや、その書き込みを読んでリアルタイムによるテレビ視聴の状況の空気を共有化すること。いわゆる「実況する」的な行動だが、テレビの一方向性と携帯電話のサービスによる双方向性を連動させる一つの手法に違いなく、各方面から注目を集めている。ツイッターの場合は専用のハッシュタグを用い、該当する意見を容易に抽出し易いようにする手立ても良く用いられる。
テレビを観て、さらにソーシャルメディアを利用している人が前提となるので、実行率は低めとなる。しかも年齢属性別の差異が大きく、実質的に積極的な利用は20代まで。さらに男性と比べて女性の方が大いに活用している。10代女性に限れば半数近い人が、週一以上で実況をしていることになる。20代でも1/3を超えている。
最後は、ある意味一番テレビ関係者が気にするであろう、ソーシャルメディアへの情報展開がテレビ視聴率を直接底上げしうるか否か。ソーシャルメディアで教えられる、情報を目に留めることで、テレビ視聴をするか否か。
毎日きっかけが生まれる人は少数だが、ゼロでは無い。また、週一以上に仕切れば10代女性では実に4割が、その経験を有している。ソーシャルメディアの利用率、利用頻度にも多分に影響されるがあるが、女性の方が、また若年層ほど値が高いのが特徴的。
今件はインターネット経由では無く、調査票調査であることから、調査メディアによる偏りが生じないことを考慮すると、テレビと携帯電話の関係に関して、現状をそのまま投影していると見て良い。テレビと携帯電話、特にソーシャルメディアが浅からぬ関係にあり、特に若年層は大いに活用している。興味深い話であり、テレビの可能性を考える上で欠かせない事実には違いない。
■関連記事: