日本インテリジェンスの最前線、「外務省・北朝鮮班」の人員数はたったの4人という衝撃的な事実
北朝鮮が2日午前6時32分(日本時間同)から同6時41分までの間に、西海岸側の南浦一帯から東海(日本海)に向けて短距離弾道ミサイル「スカッド」と推定されるミサイル2発を発射した。
韓国では米韓合同軍事演習が始まっており、ミサイル発射はこれらに反発したものとみられる。さらに、中距離弾道ミサイル「ノドン」の発射準備態勢に入っているとの情報もあり、関係各国は監視を強めている。
北朝鮮が、米韓演習に対抗して武力示威を行うのは、毎年のことだ。ただ今年は、ひとつ気になる点がある。北朝鮮政府が、昨年10月からエボラウィルスの流入阻止を名目に外国人の入国を事実上禁止してきたために、国内の「空気」を知るための情報が極端に少ないのだ。
かの国がいくら閉鎖的であると言っても、観光客やビジネスマン、国際支援団体の人々が直接訪れ、現地の人々とやり取りを重ねることで、様々な情報が漏れてくる。周辺国の情報機関はそうした手掛かりを丹念に収集し、偵察衛星などではわからない「空気」の分析を行ってきた。それが出来なければ、米韓演習に反発する北朝鮮の“本気度”がなかなかわからないのだ。
事実、かつて北朝鮮国内の「空気」を分析を最も得意していたのは、公安調査庁や公安警察などの日本の情報機関だった。年間延べ数千人から1万人以上もの在日朝鮮人が本国を訪問し、様々な情報を持ちかえっていたからだ。
しかし経済制裁で貨客船・万景峰号などの往来が止まって以降、日本の対北情報の分析能力は大きく落ちたと言われる。いや、もしかすると日本の対北朝鮮インテリジェンスは、いまが「史上最弱」の状態にあると言えるかもしれない。
その原因は、政府のインテリジェンス軽視、もっと言えば「やる気」のなさにある。
端的な例が、外務省の体制だ。日本外交のインテリジェンス最前線、「外務省・北朝鮮班」には、実はたったの4人しか配属されていない。政策判断を行う幹部を加えても計6人だ。
しかも、北朝鮮問題のエキスパートを集めた陣容とはとても言えないのである。
どうして、そうなってしまったのか。背景には外務省独特の「キャリアパス(出世の仕組み)」があり、改善される見込みは高いとは言えない。
さらに、これに加え省庁間の「タテ割り」による弊害もある。外務省の極秘行動を防衛省や公安警察がスパイするという笑えない状況が、現実に繰り広げられているのだ。
北朝鮮は、昨年の「ストックホルム合意」から1年を迎える5月に向け、日本に対して外交攻勢を準備しているフシがある。
こうした状況を踏まえたうえで、先日、あるテレビ討論番組で「拉致問題に対する日本の政府の取り組み方が不十分だから結果が出てない」と発言したところ、なぜか「北朝鮮の擁護をしている」という見当違いな反論を受けた。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という至極当たり前の指摘をしただけだったのだが・・・。
したたかで厄介な北朝鮮と交渉して成果を勝ち取るには、今のようなインテリジェンス能力では厳しい。そして、日本の対北朝鮮インテリジェンスを立て直すには、国民による監視を強めるしかない。