大正9年からのロングセラー「京観世」厳選された丹波大納言を炊き上げる鶴屋吉信さんの職人技が輝く銘菓
古来より受け継がれし浪漫を求め、国内のみならず世界中から沢山の方が訪れる都市、京都。本数の多い東海道新幹線の通過駅ということもあり、都内からのアクセスも良いので日帰り旅も楽しめるというのも魅力のひとつ。
全国の百貨店にも沢山の店舗をもつ京都を代表する老舗の和菓子屋「鶴屋吉信」さんもまた、220年以上もの時を京都で刻んできた重鎮のひとつ。近年はカフェの営業やキャラクター、コスメブランドとのコラボなど、幅広い世代の方と和菓子を結ぶ役割も果たしていらっしゃいます。
それはこれまで歩んできた道のりと確かな実績、信頼があるからこそ。今回は大河ドラマでもお馴染み、紫式部ゆかりの地に相応しい風情あるお菓子「京観世」をご紹介。
小倉羹を時雨でロールケーキのようにくるりと巻き上げたお菓子。時雨、と申しますのは、さらし餡ややや硬めに練り上げたこし餡に米粉や餅粉、小麦粉などを加えそぼろ状にしたものを蒸しあげたお菓子。ほろほろっと解ける様子が、まるで雨のようだというのが菓銘の由来となっています。
個包装のものはしっかり密封されており、フィルムをぺりっと開いた瞬間、実にふくよかかつしたたかな小豆の芳香が飛び出してくるではありませんか!思わず深呼吸をしてしまったほど。
選りすぐりの丹波大納言と十勝産小豆を更に選別したものであんこを炊いていきます。ベテランの職人さんによる腕の見せ所ですね。しっかり炊き上げられた粒餡には寒天をあわせ、村雨生地と重ねてロールケーキのようにくるりと巻き上げます。この時、時雨が厚すぎても割れてしまいますし、薄すぎても穴が開いてしまうので、長年の経験を要する作業となります。
菓子切りの先端が小倉羹に触れた瞬間、ほろりと数粒こぼれ落ちる村雨と、みちみちっという湿り気を孕んだ小倉羹の質感、そして渦巻き模様がより一層雨模様を彷彿とさせるような気が。小豆の豆らしい味わいやう旨味はしっかりとしているのですが、それが素朴すぎず、クリアな甘さと豊かな素材の風味が、滋味深く思わず目を閉じて確かめたくなるような穏やかな甘露です。
時雨には、涙という意味もあるそうです。紫式部の代表作である源氏物語には、主人公である光源氏を思い、涙を流した数多くの女性が名を連ねます。彼女達の涙や報われなかった恋心を忍び、私は甘いひとときを過ごすのです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
柳谷ナオ
<鶴屋吉信・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都府京都市上京区今出川通堀川西入る
075-441-0105
9時~18時
定休日 水曜・不定休(公式サイト参照)