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学校名に商標登録は必要か? #専門家のまとめ

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:イメージマート)

開校予定の「姫路海城高校」が、東京の海城高校の商標権に配慮して校名を変更したというニュースがありました。学校法人は非営利団体ですが「業として」活動していることから、学校の名称も商標登録の対象になります。今までにも学校名の類似が商標権(あるいは不正競争防止法の商品等表示)の問題として争われたケースはありました。代表的な事例を挙げます。

ココがポイント

当初予定していた「姫路海城高」から「姫路海稜高」に変更する案を明らかにした。
出典:神戸新聞NEXT 2024/9/4(水)

瓜生山学園に「京都芸術大学」の使用を認め、略称の「京都芸大」と「京芸」を使わないことで合意
出典:京都新聞 2021/7/20(火)

「呉青山学院」の名称を用いるこ との差止請求が認められた事例
出典:月刊高校教育(2005年8月号)

登録商標「国際自由学園」が他人の名称の著名な略称を含む商標に当たると判断
出典:最高裁判決文 2004/7/22(木)

エキスパートの補足・見解

学校の名称は、地域(東京、関東等)、分野(経済、農業等)、その他よく使われる言葉(昭和、国際等)の組み合わせとなることが多く、類似する名称が必然的に生じ得ます。たとえば、「明治大学」と「明治学院大学」等、類似する学校名は多数存在しますが、そのほとんどが特に問題なく共存できています。それでも、他校の名声にフリーライドして類似名称を使用するようなパターンでは知財での争いが生じ得ます。

大学の株式会社化などの動きに表れているように、学校の運営にも一般企業的な経営の考え方が取り込まれるようになり、学校のブランド・バリュー確立の重要性がますます高まる中、今後も類似の事例が出てくることが予想されます。学校経営者としては、早め早めの商標登録出願が求められることになるでしょう。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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