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日本代表ジェイミー・ジョセフ、完敗も落胆せずの謎。ヒントは相棒が匂わせる。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:松尾/アフロスポーツ)

 ラグビーワールドカップフランス大会開幕を9月に控えた日本代表は8月5日、東京・秩父宮ラグビー場で国内最終戦となるパシフィックネーションズシリーズのフィジー代表戦をおこない、12-35で敗れた。これで7月以降の国内戦は1勝4敗と負け越しに終わった。

 前半7分にピーター・ラブスカフニが危険なタックルで一発退場。その後は意図的にボールを動かし防御を崩す場面も作ったが、総じて相手との質量差に苦しめられた。相手のトライがテレビジョン・マッチ・オフィシャルで3度もキャンセルされたのを顧みれば、点差以上に苦しめられたと取れる。

 4年前の日本大会で初めて8強進出の日本代表は今回、本番ではイングランド代表、アルゼンチン代表などと同組。フランス大会の出場登録メンバー33人は15日に発表される。

 試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見した(姫野和樹ゲーム主将と同席)。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——ラブスカフニ選手がレッドカードを受けた。タックルについて。

「ルールに則りアジャストしなければいけない。ネガティブに考えず、彼も経験のある選手だし、きょうラグビーを始めたわけではありません。今日、彼(ラブスカフニ)には言いました。テクニックのところをやっていかなきゃいけない。現代ラグビーの解決策としてはシンプル。彼は上体が高くなる部分がある。足の運びなどをやって(再確認して)いかなくてはならない部分がある」

——フィジー代表は4年前と違う。スーパーラグビーのフィジアン・ドゥルアが設立され、多くの代表候補選手が強化されている。

「我々が2019年に成功した(ワールドカップ日本大会で日本代表が8強入り)のは、それまでの間に毎週スーパーラグビー(日本から派遣されたサンウルブズ)でプレーし、高い強度、スピードのなかでできた。きょうのフィジー代表には、フィジアン・ドゥルアの選手もたくさんいる。きっと彼らのいまの課題は、(欧州でプレーする選手と)一緒になってどれだけ合わせるかというところだと思っています。

私たちはしっかりハードトレーニングをしてきた。ただ、そういうタフな大会(スーパーラグビー)があったほうが自分たちにはよかった。タフなラグビーをしていく機会が今回の我々にはなかったのは問題です。

いままでの質問に関わることなので言わせてもらいますが、ひとつ、我々は準備に集中しなければならない。もうひとつは選手のテクニック(を見直さなければならない)。

 今日、14人になってからの70数分、選手がアタッキングラグビーを見せてくれたのは素晴らしいと思っています。長田智希も下川甲嗣も素晴らしかった。甲嗣はワーナー(・ディアンズ)の怪我で急遽、入ることになっていました。ワイダー(日本代表候補)というグループから入り、チームに貢献してくれたのは素晴らしい。70分間、ウイングがスクラムを組んでいたなか、最後までチームのスピリットを感じた。タックルの精度など改善点はありますが、チームとしての強さを見られたのはよかった。もっと賢く、スマートに、タフにならなければいけないとは思いますが、14人で質の高いチームに勝つのが難しいなか、プレッシャー下でよくできたのは素晴らしい」

——これまでの準備状況はどうか。想定との違いは。

「自分はこのチームにすごく自信がある。いい練習もできている。先週のパフォーマンスで自信をつけられたし、今週(試合前の準備)も自信を持ってできた。ただレッドカードが出ると、チームのストラクチャーが失われる。1週間やってきたことを変え、調整しなければいけない部分が出る。ただ、そこから調整し、2つトライを獲れたのは大きい。

選手たちを誇りに思います。彼らはプレーを止めませんでした。いなくなった選手のポジションはルースフォワード(フォワード第3列)という、もっともハードワークをしなければいけないところであるにもかかわらず、です。誇りに思う。ここからは精度、遂行力を高めないといけない」

 時折、口角を上げながら落ち着いた口調で話す指揮官。敗戦にも泰然自若としていた。なぜだろうか。

 その答えは知る由もないが、戦前、相棒のトニー・ブラウンアタックコーチはこう話していた。

「自分とジェイミーの仕事はプレッシャーをなくすこと。世界中のどのチームにも勝てるという信念を与えることです」

 エラーに終わったアタックも、仕組み上は防御を崩しかけていたような。本番当日から逆算したコンディショニング、本番までの戦術的なアップデートを経て、スーパーラグビーに参加できなかったマイナスポイントを解消しにかかる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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