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夢の時速170キロ超え!? アストロズ若手有望投手が計測した球速がヤバ過ぎる

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨シーズンはジョーダン・ヒックス投手がMLB最速タイの105マイルを計測(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLB公式サイトが現地11日、動画付きで非常に興味深い記事を公開している。

 記事のタイトルは「Watch Astros' top pitching prospect Forrest Whitley throw a baseball 110mph(必見、アストロズのトップ有望投手フォーレスト・ウィットリーが時速110マイルを計測)」。アストロズの有望若手投手が時速110マイル(約177キロ)を計測したというのだ。

 現在MLBの最速記録はアロルディス・チャプマン投手とジョーダン・ヒックス投手が計測している105マイル(約169キロ)だが、それを遙かに上回る球速を計測したとあっては誰でも気になるところだろう。

 早速記事に添付されているウィットリー投手自らが投稿した動画ツイートをチェックしてみたところ、半分は落胆し、半分は興奮させられた。動画を見てもらえば分かる通り、彼はマウンドから投げたのではなく、平地から勢いをつけてネットに投げ込んでいるのだ。その初速が110マイルを計測したというものだった。

 もちろんウィットリー投手がマウンドから普通に投げるのであれば、110マイルを計測するのは絶対に不可能だ。記事でも説明しているように、これは「pulldown」と呼ばれるもので、球速アップを目指したトレーニングとして多くの選手が導入するようになっている。このトレーニングで球速が上がるようになれば、マウンドから投げても同様に球速が上がるといわれている。

 残念ながら記事のタイトルに騙された感は否めないが、ただトレーニングといいながらも110マイルを計測するのは簡単なことではない。そこでウィットリー投手について調べてみたのだが、ちょっと注目して欲しい投手だったのだ。

 2016年にアストロズからドラフト1巡目(全体で17番目)で指名された21歳の右腕投手だ。身長2メートルを超える豪腕投手で、球速は90マイル台後半(150キロ台後半)を計測し、高速スライダーと落差のあるカーブを操るという。高卒選手ながらプロ2年目の2017年シーズン途中で2Aまでステップアップし、若手有望選手のスカウティングレポートに定評のある『Baseball America』が発表した2018年有望選手ランキングで、大谷翔平選手に続き投手部門2位(全体10位)に入っている。

 期待された2018年シーズンは左脇の故障と薬物規則違反による50試合の出場停止処分でわずか8試合しか登板できなかったが、公式戦終了後に若手有望選手が集結するアリゾナ秋季リーグに参加。6試合に登板し、勝敗は1勝2敗ながら打者が圧倒的な有利のアリゾナで防御率2.42、被本塁打ゼロ、WHIP(1イニング当たりの平均被安打+与四球数)0.96と抜群の成績を残している。

 現在MLB公式サイトによるアストロズの有望選手ランキングでも2位に入っている。まだまだ若いが、来年にも招待選手としてメジャーのスプリングトレーニングに参加する可能性は十分にありそうだ。

 結果的に将来楽しみな投手を知ることができ、騙された以上に得した気持ちになっている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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