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WL初登板を終えた松坂投手が抱える不確定要素

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
日本以外での登板は2014年のメッツ以来となった松坂大輔投手(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

プエルトリコのウィンターリーグ(WL)に参戦中のソフトバンク・松坂大輔投手が3日、同リーグで初登板を果たした。結果は4回を投げ、1安打2失点、2三振、6四球。チームも1-3で敗れ、敗戦投手となった。

失点は初回に打たれた2点本塁打によるもので、2回以降は無失点に抑えることに成功。さらに3回まで毎回四球を与えながらも、4回は3者凡退で切り抜けた。最後の実戦登板となった10月2日の楽天戦では、前回は1回を3安打5失点、4四死球と散々だったが、今回は尻上がりに調子が上がっていったようだ。

今後は1ヶ月ほど同リーグに参加し実戦を重ねる予定だというが、そう簡単な話ではない。すべて本人の希望通りにいくとは限らないのがWLの難しさなのだ。

というのも、参加時期があまりにも遅すぎた。松坂投手がWL参戦希望だと報じられたのはNPBのシーズンが終了して間もなくのことだった。プエルトリコのWLは10月下旬に開幕しており、早い時期から参戦することも可能だったはずだ(契約上の問題で遅れたことも十分に考えられるのだが…)。

公式戦は今月末で終了するが、現在は1月から始まるプレーオフ進出を賭けた激しい攻防戦を繰り広げており、まさにシーズンの佳境を迎えている状況だ。

松坂投手が所属するカロリナは現在、5チーム中4位につけ、プレーオフ進出圏内の3位入りを目指しており、毎試合真剣勝負が続いている。調整登板とはいえ松坂投手もチームからしっかり結果が求められているのだ。

それを物語るように、巨人から同じカロリナに派遣されている3選手の1人、高木勇人投手は先発としてここまで5試合に登板しているが、ここ2試合はいずれも3失点ながら4回、2回と早期に交代させられている。いうまでもなくチームの監督は、勝利優先で采配を行っているからだ。

それでもWL開幕当初は、メジャー及びマイナーのシーズン終了後で短い休養をとる選手が多く、各チームとも選手集めに苦労する。巨人の3選手は開幕から参加していたこともあり、それぞれしっかり出場機会が与えられてきている(岡本選手は打率.215ながらチーム5位の24試合に出場、平良投手の5試合にリリーフ登板している)。

だが12月に入ると、各チームともに予備登録されているメジャー及びマイナー選手が参加するケースが増えてくるのだ。カロリナも今季ツインズで13勝を挙げたヘクター・サンティアゴ投手ら8人の投手が予備登録されており、彼らが加われば結果を残せていない投手は登板機会を失うことになる。

かつて巨人、近鉄などで活躍した三澤興一投手がドミニカのWLに参加したことがあったのだが、一度登板に失敗しただけでそれ以降は投げさせてもらえず、登板機会を求めてシーズン途中でベネズエラのWLに転戦したという過去もあるほどだ。

松坂投手としては今後球数を増やしながら長いイニングを投げていきたいところだろう。しかし投球内容次第では早期交代も有り得るし、最悪の場合、登板機会を失う可能性もゼロではない。

すべては今後の松坂投手の投球にかかっているわけだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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