マイナス金利政策への見直し機運が高まるか
12月18、19日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見が公表された。このなかで少し気になったところがあった。
この会合では金融政策の現状維持が決定され、市場予想も現状維持かとなっていたため、注目度は低かった。このため、主な意見についてもそれほど関心はなかったかもしれない。
しかし、主な意見をみるとあれっと思う部分もあった。それは「金融政策運営に関する意見」にあった。それは下記の部分である。
「家計・企業の合計では金融資産超過となっており、預金に口座維持手数料が賦課されることになれば、資産利回り低下の影響が借入に伴う負債コスト低下の効果を上回る可能性がある。また、株価などの動向次第では、相対的に収益率の高い株式を多く持つ主体がより優位となり、所得格差が拡大する可能性もある。この点、ドイツでは、法人に加え個人の大口預金にも実質的にマイナス金利を適用する動きや、口座維持手数料を引き上げる動きが進んでおり、国民経済への影響を含め、ドイツの状況を注視していく必要がある。」
まず気になったのは、通常は話された意見をまとめるはずのものが、意外に長い意見となっていたという点である。これは、たまたまかもしれないが、その内容も興味深い。
「預金に口座維持手数料が賦課されることになれば」ということは、前提が書かれていないが、「日銀のマイナス金利政策の継続により」ということが前提にあろう。
そして、同じくマイナス金利政策が行われているユーロ圏のドイツの事例について指摘している。「法人に加え個人の大口預金にも実質的にマイナス金利を適用する動き」について、それの影響を注視する必要があるという。
日銀の金融政策決定会合が開催された19日、英国の中央銀行のイングランド銀行、そしてスウェーデンの中央銀行のリクスバンクでも金融政策を決める会合が開催された。イングランド銀行は現状維持となったが、リクスバンクはマイナス金利政策をその副作用を意識して解除したのである。
日銀のマイナス金利政策により、ドイツのように個人にも負担を課す状況となった場合、経済そのものへの影響だけでなく、日銀の政策そのものへに個人の関心が向かう可能性がある。
もちろんその背景には金融機関に与える負の影響が大きいためである。リクスバンクはマイナス金利政策の効果と副作用を秤に掛けて、それを取りやめることにした。
これはリクスバンクに止まるとは思えない。ECBもトップが代わり、ドイツなどの参加者の意見もある程度反映されることになれば、景気への負の影響も意識してマイナス金利政策を解除する可能性がまったくないわけではない。
ただし、ECB理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は27日にECBの政策金利が2020年にプラスに引き上げられることはないとの見方を示した(ロイター)。英国のEU離脱後の移行期間の期限を迎える来年12月に懸念が再び高まると予想しているようである。
日銀は頑なにマイナス金利政策の維持、もしくは追加緩和策としてマイナス金利の深掘りの可能性も前面に押し出してはいる。しかし、今後はマイナス金利政策への見直し機運が高まってくる可能性もあるのではないかと今回の主な意見から思えた次第である。