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中国は「祝賀御列の儀」をどう報道したか?

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
令和天皇即位の礼祝賀行事の一齣(10月23日)(写真:REX/アフロ)

 10日に行われた天皇陛下の即位祝賀パレードを中国共産党が管轄するテレビ局や新聞などの官側メディアが一斉に報道しただけでなく、ウェイボーなどにも多くの声が寄せられており、削除されていない。

◆官側の報道

まず11月10日午後7時のニュースで、中国共産党が管轄するテレビ局である中央テレビ局CCTVは簡潔に報道したあと、7時12分にCCTVのネット端末で文字と華やかな写真により、「日本徳仁天皇即位パレード:天皇は勲章をつけ、皇后はティアラを」という見出しで「祝賀御列の儀」を報道した。

 そこには中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」電子版「環球網」の速報が使われ、かなり詳細に「祝賀御列の儀」を伝えている。記事に含まれている内容を列挙すると以下の通りだ。

 ●日本時間11月10日午後、日本の徳仁天皇(ご)夫妻は告示としての「即位の礼」の最後の儀式である「祝賀御列之儀」を行なった(中国文には「ご夫妻」の「ご」に当たる文字はないので、中文を翻訳しているため、翻訳文の中では「ご」を省く。他の敬称も同様)。

 ●天皇夫妻はオープンカーに乗ってパレードを行い、沿道に並ぶ多くの庶民の祝福を受けた。

 ●これは徳仁天皇夫妻が1993年6月に結婚した時以来の二度目のパレードであった。

 ●共同通信によれば、徳仁天皇夫妻は当日午後、皇居正面を出発して、途中、警視庁、国会議事堂、自民党本部などを通って、4.6キロの距離を赤坂御所までパレードした。

 ●天皇は燕尾服に勲章をつけ、皇后はティアラ(tiara)を頭につけていた。皇嗣(こうし)秋筱宮夫妻および安倍晋三首相などが乗った別の車も隊列に加わった。

 ●共同通信社は、「台風ハギビスがもたらした被害を考慮し、本来、即位大典の後すぐに行われるはずだった祝賀御列の儀を今日まで延期した」と伝えた。また今回の儀式の後、今月14日から15日に日本ではさらに皇位継承の重要な儀式である「大嘗祭(だいじょうさい)」などの活動が控えている。

 ●今年4月30日、日本の明仁天皇が退位した。5月1日には徳仁皇太子が即位し、日本の第126代天皇となり、日本は正式に「令和」の時代に入った。10月22日、徳仁天皇は国内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」を東京の皇居宮殿内に執り行い、100以上の国の元首や王室、政府高官、各界代表を招き、日本皇室の関係者や、三権の長、各県知事など約2000人が参列した。

 以上だが、ここまで完璧に日本の天皇即位に関する現状を伝えた報道も少ないのではないだろうか。同様のものはさまざまな形で転載され、また環球時報は別途「日本天皇即位パレード 12万人近くが観礼」という記事を報道している。この「観礼」という言葉は、祝賀行事などを観覧するという意味で、日本語にもあるのだが、日本ではあまり使わない。せめて観覧となるが、ここに「観礼」という漢字を持ってきたことに、「皇室に対する敬意」が現れている。この漢字を使っていることには少々驚いた。

 この記事もまたネットユーザーがよく見る新浪(sina)サイトなど 、多くのサイトに転載されている。

 11月11日の朝9時のニュースでは、CCTVで再び動画で「日本、天皇即位祝賀パレードを挙行」というタイトルで放映された。

 かつてなかった現象と言っていいだろう。

◆民間のネット情報やウェイボーのコメント

 民間独自の情報としては「日本徳仁天皇即位パレード  詳細は全てここにあるよ」と、アクセスを誘うようなタイトルを付けているものなどもあり、注意を引いた。たしかにそこには写真が数多くあり、人目を惹く。

 数え上げればキリがないが、中国版ツイッターであるウェイボーを覗いてみるのも、庶民の直接の反応を知ることができて悪くない。

 これらはランダムに湧き出て来るのでまとめにくいが、割合にまとまっているサイトがあったので、ご紹介しておこう。

 日本の報道を転載したものもあるが、東京の現場にいた中国人が自ら撮影したらしい独自のものもある。

 アイドルグループの「嵐」が登場したことに強い関心を持ったらしい様子もうかがえる。

 他の個別のコメントとしては「雅子さん、キレイ!」とか、「ずーっと手を振っていて疲れないだろうか」とか「日本って、こんなに天皇信仰が強いのか」などがあり、印象的だったのは「溥儀(ふぎ=清王朝最後の皇帝)は不幸だったよなぁ…」と清王朝を懐かしむような、悲哀を帯びたトーンのものがあったことだ。

 もちろん反日的な書き込みもそれなりにあるにはあった。

 しかし、総じて好意的であったと言えよう。

 中国政府自身が、米中貿易戦争でアメリカから半導体などの輸出規制を受け、何としても日本を中国側に誘い込んでアメリカに対抗しようと戦略を練っていることもあるが、それ以外にも、4月4日付のコラム<「令和」に関して炎上する中国ネット>に書いたように、改元や天皇即位などとなると、中国の民は燃える傾向にある。

 中国こそが「元祖だ」という気持ちが、複雑に自尊心や羨望を刺激している側面は否めない。

 日本のアニメや漫画に刺激されて、日本の文化に興味を持っている若者たちの心を映し出すコメントとして「なぁんだ、着物じゃないのか。ガッカリ!これじゃイギリスと同じじゃないか……」というものがあったり、「いや、今、どんな時代だと思ってるんだい?なに、この古式蒼然(こしょくそうぜん)たる様は!」というものも見受けられる。この一見否定的に見える言葉の中に、少しも批判的なもの(悪意)が感ぜられず、むしろ屈折した自尊心と羨望が深く埋め込まれているように思われてしまうのである。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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