金利復活に備えた準備を
西村康稔経済産業相は9月19日の閣議後の記者会見で、政府が10月にまとめる経済対策について「やがてくるであろう金利高を乗り越えていける中小企業の体質強化も必要だ」と述べた。日銀の政策動向に備え、中小の賃上げをはじめとした取り組みを支える対策を検討する考えを示した(19日付日本経済新聞)。
読売新聞は9日の朝刊一面で、日銀総裁の単独インタビュー記事を一面に掲載した。このインタビュー記事の内容で注意すべきは「物価目標の実現にはまだ距離がある」としながらも、マイナス金利解除を選択肢としてあげたことであろう。
市場では来年ではなく、年内にもマイナス金利政策の解除の可能性を意識しはじめた。政府関係者からも「金利高」という言葉を使い始めたのは興味深い。やがてくるであろうの「やがて」がどの程度の期間をみているのか。
この金利高について短期金利ではなく、長期金利を指しているのだとすれば、すでに10年国債の利回り(長期金利)は、0.7%台に上昇しており、これは2014年1月以来の高い水準となっている。
米長期金利の上昇と、それによる日米金利差の拡大、それによる円安といった動きとなり、その円安にブレーキを掛けるためにも、日銀には金融政策の正常化が求められる。
これまではのらりくらりと日銀は正常化に向きを買えるのを拒んできたが、それを長くは続けられなくなってきた。
物価上昇要因をコストプッシュ型とディマンドプル型に分けるなどということを過去の日銀は言っていなかった。たしかに賃金上昇を伴う物価上昇との表現はあった。しかし、どのような理由であろうと物価そのものが上昇している状況下で、物価の番人がそれを止めるどころか、加速させかねない政策を続けることに大きな矛盾が存在している。
その矛盾が表面化してきており、政治家からも金融政策の正常化、つまりは金利の上昇に備えるべきとの言葉が出てきたことは意味がある。
政府にとってはなるべく国債の利回りは抑えたい。国債の利回りが上昇すると利払い費の増加に繋がるだけでなく、いわゆる放漫財政はこれからは困難になることが予想される。
財務省の来年度予算で想定する長期金利は1.5%かとの報道もあった。そのまま適用されれば長期金利が1.5%を超えて上がらない限りは利払い費は想定内となるが、それ以上に上がると費用増となる。
1.5%は遠いようにみえるが、6%とか7%とかの長期金利を経験した身としては、それほど遠い数値にはみえない。金利が動くと大きく状況は変わる。それがどのように変わるのか。西村経済大臣に言われるまでもなく準備をしておく必要はあろう。