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仕事以外の付き合いはあった方がよいか否か…「上司との関係」への考え方、その実情と変化

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
いわゆる「飲みニケーション」も上司との関係ではよくある話(写真:アフロ)

よほどの少人数による構成組織や身内だけの事業体でない限り、就業すると多数の上司との間で人間関係が発生することになる。そのような「上司との関係」において、人々の考えはどのような変化を見せているだろうか。今回は付き合い方や上司の面倒見の是非に焦点を絞り統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)の結果から、その実情を探ることにする。

今回焦点を当てるのは、上司(上役)と回答者自身の関係に関する項目。まずは「上役との付き合い」について。

上役との関係は仕事でのみか、それとも仕事以外(例えばプライベート)でもあるべきか、という点について。1973年時点では圧倒的多数が「仕事以外もあり」とする意見で占められていた。しかし1998年になると「仕事以外は無くてもよい」とする意見が2倍近くに増加する。

ところがそれ以降、再びその意見は漸減し、「上司とは仕事以外も付き合いがあった方がよい」とする意見が増えているのが確認できる。しかし直近の2018年では再び「仕事以外は無くてもよい」が大きく増える動きを示した。

↑ 会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか
↑ 会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか

1998年以降の流れでは調査回ごとに「無くてもよい」が1%ポイントずつ減っていたが、2013年では一気に7%ポイントも減り、その分「あった方がよい」が増え、勢いが加速した感はあった。しかし直近の2018年においては「無くてもよい」とする意見は36%となり、前回調査結果から6%ポイントも増えてしまっている。

これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。ただし今件は現時点で直近2018年分の年齢階層別の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる。20~30代で2003年から2008年にかけて大きな上昇が確認できる。今世紀に入り、若年層の間で職場における上役への期待・価値観の変化が見受けられる。

↑ 「会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか」で「あった方がよい」とする回答
↑ 「会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか」で「あった方がよい」とする回答

2013年ではその勢いは減じたものの、上昇基調が続いていることに変わりはなく、20代の「あった方がよい」派は70代以上の値に近づき、30代もそれに続く。また下落基調にあった40代が2013年では大きく上昇を示したのも興味深いところ。2018年の値が気になるところだが。

一方で望まれる上司像に関して、若年層の間の価値観の変化も注目に値する動きを示している。上役の行動傾向として「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では人の面倒を見ない課長(ドライ上役)」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長(熱血モーレツ上役)」の2パターンを提示し、どちらを好むかについて尋ね、ドライ上役を望む人の割合を示したのが次のグラフ。今件も現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる。

↑ 「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では人の面倒を見ない課長」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長」のうち、前者を好む人の割合
↑ 「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では人の面倒を見ない課長」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長」のうち、前者を好む人の割合

1970年代後半から20~30代の若年層間でこのタイプを好む人が増加する傾向にあったが、1998年をピークに、横ばい、そして2008年までは減少する動きを見せていた。仕事は仕事と割り切って上下関係が構築できれば良しとする若年層が減少、言い換えれば、仕事では多少無理をさせることがあっても、色々な面で面倒見のよい上司を好む若年層が増えていたことが分かる。

ところが直近の2013年では再びこの値が大きく上昇し、20代・30代ともに今項目の調査以降最大の値を示す形となった。上役との間におけるそこそこの付き合いは望みたいが、過度な面倒は御免こうむりたい、さらには仕事上での無理は避けたいとする、平穏無事・安定志向が表れているのかもしれない。実際仕事に関する他の項目でも、チャレンジ精神に係わる項目が若年層で減少し、確実性を求める動きが高まっているのも、それの裏付けとなろう。

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※日本人の国民性調査

統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は 【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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