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49歳。「結婚したい」時期は突き抜けて、今は「一人の境地」で過ごしています~スナック大宮問答集60~

大宮冬洋フリーライター
東京・虎ノ門の中華食堂にて。参加者の一人と改めて語り合いました。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催140回を超えた。のべ2800人ほどと飲み交わしてきたことになる。
 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***ミズエさん(仮名。独身女性、49歳)との対話***

日常では出会わないような人たちと和やかに食事ができるのが新鮮。一期一会が楽しい

――ミズエさんは西日本の某地から5時間ほどかけて遠征参加してくれる常連さんですよね。Zoomインタビューに応じてくれている今はどちらにいらっしゃるんですか?

 関東にあるスキー場近くのペンションにいます。こういうペンションでは宿泊者が自然発生的に集まって晩酌をすることも少なくありません。今日もすでに少しお酒が回っています(笑)。何か失礼なことを言ったらごめんなさい。

――各地で開催するスナック大宮に、スキー旅行がてら参加してくれることが多いですよね。スナック大宮のお客さんにはミズエさんのような「旅派」がいます。他のお客さんの大半は近隣の住民なので、普通の旅行では味わえない交流ができたりしますよね。

 はい。私は薬剤師として病院勤務なのですが、スナック大宮ではその日常では出会わないような人たちと和やかに食事ができるのが新鮮です。いろんな人がいるのに、とんがり過ぎていて怖い人に会ったことは今のところありません。一期一会を楽しませてもらっています。

――スナック大宮に参加しても、経済的な得などは皆無ですからね(笑)。ギラギラした感じの人はほとんど見かけません。

 確かに(笑)。みんないい感じに力が抜けた状態ですよね。私は「楽しい場に身を置く回数を増やしたほうがいい」と思っています。そのほうが長く付き合える友だちができる確率が高まるからです。

前菜だけでこのボリューム。虎ノ門ヒルズにほど近い「旬夏秋冬」はやたらに良心的なお店でした。(参加者提供)
前菜だけでこのボリューム。虎ノ門ヒルズにほど近い「旬夏秋冬」はやたらに良心的なお店でした。(参加者提供)

予想外の趣味などに打ち込んでいることがわかると「この人、面白い!」と好きになる

――お仕事のほうはいかがですか。

 私は大学を出て就職した後に、薬学部に入り直して薬剤師になりました。だから、薬剤師としてのキャリアは15年ほどしかありません。まだまだ未熟で、勉強することは多いです。患者さんは一人ひとり異なるので飽きません。お医者さんの処方に対して「こちらの薬もありますよ」と提案して採用されることもありますし、「この症状にはどんな薬がいいのか」と相談されると嬉しいですね。調べ物は好きなほうです。

――そして、スキーのシーズンには思いっきり遊んでいるのですね。

 遊びを超えて、もはや自分との戦いです(笑)。朝はできなかった技を夕方にはできるようになっていたい。本格的に初めてまだ8年ほどですが、年間20日超は滑っています。基本的にはペンションで連泊してスキー三昧です。

――結婚したいと思うことはありますか? スナック大宮は婚活の場ではないので既婚者のお客さんも多いのですが、独身者同士が勝手に意気投合して交際からの結婚に発展することもあります。

 結婚したいと思う時期を突き抜けて、今は「もう難しいだろうな」という境地です。一人の生活に慣れ過ぎているので……。でも、「いい人ができたらいいな」とは常に思っています。

――ミズエさんにとっての「いい人」はどんなタイプなんでしょうね。

今まで付き合った人のタイプはあまりにバラバラで、自分の好みはよくわかりません(笑)。人間としてちゃんとしていて、私がスキーに行くのを許してくれる人かな……。あとは、「この人は面白い!」と思えること。当初の真面目な印象をいい意味で裏切られて、予想外の趣味などに打ち込んでいることがわかったりすると興味がわきます。私はギャップで好きになる性質なのかもしれません。

恒例の自著宣伝コーナー。ただでさえトーク下手な筆者は、酔いと緊張でグダグダになっています。(参加者提供)
恒例の自著宣伝コーナー。ただでさえトーク下手な筆者は、酔いと緊張でグダグダになっています。(参加者提供)

*****

「楽しい場に身を置く回数を増やすと、長く付き合える友だちができる確率が高まる」について

 以上がミズエさんとの対話だ。「楽しい場に身を置く回数を増やすと、長く付き合える友だちができる確率が高まる」という指摘には大いに共感した。肝心なのは、自分にとっての「楽しい場」を見つけることだが、趣味嗜好に沿った場であれば大きな外れはないと思う。ミズエさんのようなスキー好きならば、スキー場近くの小さなペンションは最適だろう。
 若い頃は、自分が本当に求めるものがわからずに失敗をしたりする。筆者は、特に音楽好きでもないのにクラブで無理に踊っていた時期がある。「オシャレな人」になりたかったからだ。しかし、同じクラブに何度通っても、いい友だちなどはできなかった。きっとお互いに「こいつは肌合いが違うな」と感じたのだろう。
 大人になると虚勢を張ることに疲れてきて、気を抜いて楽しめるような場を求め始める。すると、同じような感覚の人と気軽に言葉を交わすことが増え、何かのきっかけで急に親しくなったりもする。「長く付き合える友だち」や恋人ができることもあるだろう。自分の心を知り、行動する少しの勇気があれば、孤立とは無縁の豊かな人生を送れる気がする。

スナック大宮は2時間半程度の営業です。途中で席替えもして、できるだけ多くの人と交流できるようにしています。(参加者提供)
スナック大宮は2時間半程度の営業です。途中で席替えもして、できるだけ多くの人と交流できるようにしています。(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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