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長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』は、笑って楽しめるコンゲームドラマ!?

碓井広義メディア文化評論家
(写真:アフロ)

「コンゲームドラマ」に挑んだ、今期の月9

コンフィデンスマン、もしくはコンマン。その意味は詐欺師とかペテン師であり、相手を信用させて詐欺を働くことを指すのが「コンゲーム」です。

「コンゲーム映画」なら、懐かしいところではポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの『スティング』(73年)でしょうか。最近だとジョージ・クルーニー主演の『オーシャンズ11』シリーズなどがありますよね。

現在放送中のフジテレビ月9『コンフィデンスマンJP』は、まさに「コンゲームドラマ」です。チームのメンバーはボスのダー子(長澤まさみ)、人のいい青年詐欺師ボクちゃん(東出昌大)、そして変装名人リチャード(小日向文世)の3人で、随時必要な助っ人が加わります。

これまでにターゲットとなったのは裏の顔を持つ公益財団会長(江口洋介)、ホテルチェーンの強欲経営者(吉瀬美智子)、美術品の真贋を偽って儲けている美術評論家(石黒賢)などなど。

たとえば第4話「映画マニア編」で狙われたのは、食品偽装で利益をあげてきた会社の社長(佐野史郎)で、彼の映画好きを利用した「映画製作詐欺」ともいうべき仕掛けが見ものでした。

そう、コンゲームドラマの醍醐味は、一にも二にも「仕掛け」の面白さにあります。それはだましの方法やテクニックだけでなく、映画『スティング』で本物そっくりの偽の賭博場を造ったりするような物理的投資も含みます。

このドラマでも「美術」には結構な予算を使っているように思えます。何しろ、背景のしつらえが本物らしく見えないと、ドラマ全体が嘘っぽくなります。ただでさえ、嘘をつくのがテーマのドラマですからね。

視聴者に、何を、どこまで知らせるのか!?

一般的にドラマの中で描かれている内容は、大きく次の数種類に分けることができます。

・登場人物も視聴者も知っていること。

・登場人物も視聴者も知らないこと。

・登場人物は知っているけど視聴者は知らないこと。

・登場人物は知らないけど視聴者は知っていること。

もちろん登場人物は一人じゃなかったりするので、登場人物Aが知っていることを登場人物Bは知らないという状況を、視聴者が分かって見ている場合があります。またそんな状況を視聴者も分かっていないケースもあるわけです。

第5話「スーパードクター編」の山場である手術場面で、「ボストンの名医」に化けたダー子(見開く目はドクターXこと大門未知子風)が、実際に患者の体にメスを入れるのを見て、ボクちゃんは驚愕します。そして視聴者も。

仕掛けた本人だからダー子は真相を知っている。でも仲間であるボクちゃんは知らない。視聴者は全体像を知ってるつもりだったのに、まんまとだまされる。いや、だまさなかった視聴者もいたでしょうが(笑)。

つまり相手や仲間がだまされると同時に、見る側(観客・視聴者)もだまされてしまう。それが「コンゲーム映画」や「コンゲームドラマ」の快感でしょう。でも、これって言うのは簡単。作るほうは大変なのです。

ましてや映画やドラマスペシャルのような「単発」ならまだしも、「連ドラ」で毎週やるとなったら一大事。なぜなら、毎週だと視聴者も慣れてくるからです。「きっと今回も我々視聴者をだまそうとしてるんでしょ?」てな具合に身構えますよね。

脚本は、ドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)や『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)、映画『三丁目の夕日』シリーズなどを手掛けてきた名手、古沢良太さんのオリジナルです。

ハリウッド並みのスケールは無理だとしても、3人のキャラクターを生かした「だまし技」の連打が、古沢さんの腕の見せどころ。「視聴者に、何を、どこまで、どのタイミングで知らせるのか」を緻密に計算した、毎週楽しめる「コンゲームドラマ」になっています。

加えて、長澤さんの異様なハイテンションと、吹っ切れたような毎回のコスプレショーも一見の価値あり。後半戦にも期待の長澤さんには、今期ドラマの「怪演大賞」を贈呈したいと思います。

<このドラマとは無関係な追記> 2018.05.20

是枝裕和監督の「万引き家族」が、

カンヌ国際映画祭で

パルムドールを受賞したとのこと。

拍手です!

思えば、

是枝さんと初めて会ったのは、

テレビマンユニオンが行った

「新人採用試験」での面接でした。

30年前のことです。

もう30年かあ、

といった感慨はともかく(笑)。

是枝さん、

おめでとう!

早く

「万引き家族」が

見たいものです。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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