増えた募集ポスター、気になる金額上昇…アルバイトの時給動向を探る
人手不足の話はパート・アルバイト界隈でもよく見聞きするようになり、応募要項の時給も上昇している。それだけ人手が必要な業務が新たに生じた、あるいは人員の新陳代謝が起きていることをも意味し、経済が活況化しつつあることを示す指標の一つでもある。それではアルバイトの時給はいかなる推移を示しているのだろうか。リクルートグループが展開している求人情報メディア「TOWNWORK」「TOWNWORK社員」「fromA navi」に掲載された求人情報をベースとして同社が毎月定点観測的に集計・公開しているデータを基に、その動向を探ることにする。
今回確認をするのは、長期時系列のデータ取得が容易な三大都市圏における全体値(平均値、以下同)、日常生活で見聞きすることが多い販売・サービス系(例:レジ、販売、コンビニスタッフ、チラシやパンフ配布など)、そしてフード系(飲食店のホールスタッフ、ファストフードなど)の3項目。
まずは全体的なパート・アルバイトの募集時における平均時給の推移。各グラフでは描写範囲内の最高額・最低額の月の具体的値も配している。
最低額は意外にも金融危機ぼっ発前の2007年4月における928円。以降900円台後半にまで上昇し、一定額のボックス圏内で推移する。毎年特定の時期に大きく跳ねる様子が見られるが、これは年末(12月)におけるかきいれどきの求人で、相場が上昇するため。
金融危機、リーマンショックの影響もほとんど出ていないが、その後の震災、極度の円高不況からはいくぶんマイナスの影響が生じているように見える。2013年以降は年末のピークの後の下げ方も限定的なものとなり、2014年では夏以降高止まりしている。直近2014年10月は精査可能期間内では最高額、961円を示す形となった。
続いて販売・サービス系。
最安値を付けた時期が金融危機ぼっ発前であることは全体値動向と同じ。またリーマンショックの影響を大きく受けているのが確認できる。一方で最高値は震災のあった2011年の年末。それ以降はむしろ安値安定の流れにある。
最後はフード系。景気動向に即した、典型的な動きを示している。
最安値を付けたのは震災直後の2011年4月で893円。それ以前は金融危機ぼっ発後もあまり変わらず、リーマンショック以降は下げている。そして震災以降は2012年夏から2013年夏ぐらいまではほぼ横ばい、それ以降は上昇カーブを強めながら推移している。直近の2014年10月が最高値をつけているのも全体値と同じ。年末12月において高値を付ける傾向が見られないのは、他のグラフとは異なる動きでもある。
販売・サービス系ではやや異なる動向を示すものの、全体的にパートやアルバイトの時給も少しずつ上昇傾向にある。需給の関係から考察すれば、求職者以上に求人が増え、現条件では潜在的求人を発掘しきれないことから、賃金を引き上げることで求人を充足させようとする動きの中にあると見て良いだろう。「非正規雇用の就業者が急増している」現状と合わせると、少なくともパートやアルバイトの雇用市場では、就業する立場にある人から見て、情勢は好転していると見てよいのではないだろうか。
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