いわゆる「真の失業率」も算出・「仕事はしたいが求職活動はしなかった」人の動向
「完全失業者ではないが就職を希望する人たち」とは
世間一般に語られる失業率とは「完全失業率」を意味し、これはILOの国際基準に則る形で算出されている。具体的には「完全失業者÷労働力人口×100(%)」という計算式があり、この「完全失業者」とは「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「仕事を探す活動をしていた」の3条件すべてに当てはまる人を指す。
一方でこの3条件のうち一つでも当てはまらず、かつ現在雇用されていない人は「非労働人口」に該当する。2013年分の労働力調査によると、日本の非労働人口は4500万人。そのうち「就業希望者(就業を希望しているものの、求職活動をしていない人)」は428万人となる。
「非労働人口のうち就職希望者」の実情はさまざま。「この景気では就職活動をしても無駄骨になりそう。就職はあきらめるか」と考えた人、「病気で身体を壊して静養の必要がある。就職したいが、無理はしないでおこう」という人、「子供が生まれるので出産と育児で忙しい。仕事は断念」な人などなど。
そこで、その内訳を示したのが次のグラフ。「非労働人口のうち就職希望者」で一番回答として選ばれそうな、「適当な仕事がありそうにない」人は2013年では137万人。「非労働人口のうち就職希望者」全体に占める割合は32.0%、1/3近くを占めている。
昨今これまで以上に注目を集めている「育児休業」と密接な関係がある「出産・育児のため」の値は1/4近く。また今後さらに大きな社会問題化しそうな「介護・看護のため」の回答が4.7%いるのが確認できる。「適当な仕事がありそうにない」は過去のデータと比較すると減少しており喜ばしい状況だが、「出産・育児のため」「介護・看護のため」の2項目は今後特に注目していく必要がある。
「適当な仕事がありそうにない」と「景気が悪くて就職活動をあきらめた人」と
上記「非労働力人口のうち就業希望者の内訳」で、「適当な仕事がありそうにない」に関してその内訳を細かく確認し、人数推移を示したのが次のグラフ。
「リーマンショック」の2009年以降、「非労働人口」においても、それ以前とは状況が異なる様相を見せていることが把握できる。景気連動性の高い「今の景気や季節では仕事がありそうにない」の動きを見る限り、直近では2009年を直近における最悪期として、労働市場の最悪期は脱しつつあると考えられる。
2013年では「近くに仕事がありそうにない」以外はすべて減少・横ばい。特に「今の景気や季節では仕事がありそうにない」の数が大幅に減少し、金融危機ぼっ発直前の値にまで低下している。地域による格差は考慮する必要はあるものの、全体的には労働市場が改善していることがあらためて認識できる。
冒頭で触れたように、「完全失業率」にはミスマッチを懸念しての敬遠では無く、「景気が悪くて就職活動をあきらめた人」(2013年では10万人)は入っていない。「だから本当はもっと失業率・失業者は上のはずで、公表値はまやかしだ」との話を見聞きする。この意見に基づき、2013年の完全失業者数(265万人)と比較すると、10万人という値はそれなりに大きな値となる(3.8%分)。
仮に概算すると、労働力人口が6568万人・完全失業者数は265万人、ここに10万人を追加して、(265+10)÷6568=4.19%。これが一部で語られている「真の失業率」となる。公式の完全失業率の4.03%とは0.16%ポイントの差。
仮に「ミスマッチの懸念による就活忌避もすべて失業者とすべきだ」との意見を取り入れ、「適当な仕事がありそうにない」をすべて「真の失業者」として計上すると、この値は6.12%にまで上昇するが、この仮定はあまりにも無理がありすぎる。「(完全)失業」という言葉の定義そのものの根底から再検討しなければならなくなる。あるいは不完全失業率とでも提起すべきか。
「仕事を探す活動」の定義
余談ではあるが、「完全失業者」の要件の1つ「仕事を探す活動をしていた」に関して、これを「ハローワークに登録していること”のみ”」と誤解している人が多い。しかし実際には「労働力調査に関するQ&A」にある通り、
公共職業安定所(ハローワーク)に登録して仕事を探している人のほかに、求人広告・求人情報誌や学校・知人などへの紹介依頼による人、直接事務所の求人に応募など、その方法にかかわらず、仕事を探す活動をしていた人が広く含まれる
と定義されている。誤解なさらぬよう、ご注意あれ。
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