Apple Vision Proを初体験。スポーツ観戦ガチ勢が買いたくなる機能の没入感がヤバかった
Apple Vision Proを体験してきた。出た当初、僕はVision Proに対して懐疑的な姿勢を取っていた。理由は3つ。
1つ目は着け心地の悪さ。顔や首の締め付けの不快感、酔い、目の充血などを報告している人が見受けられたからだ。2つ目は、価格を正当化できるほど作業の効率化や生産性の向上が期待できないこと。3つ目は、キラーアプリの不在。
実際に体験したところ、着け心地は決して良いとは思えなかった。しかしこれは僕の顔や頭の形に最適化されたものではないことも影響していると考えられる。
「目で見て、指で摘まむ」という基本的な操作は、画面上にあるものをタップするというiPhoneやiPadのような操作に比べて直感的ではないと感じたが、体験としては非常に面白かった。
目で見たものが選択され、指で引っ張れば手前に来て、ウィンドウの端を見て引っ張ればウィンドウサイズを変更できる。空間内にウィンドウを自由に配置できるため、巨大化したSafariを天井に置いて、右側に接続したMacBook Proの画面を表示して100インチサイズで動画編集画面を置き、右側にApp Store、左側にApple TVアプリを置いていつでも暇つぶしができる状態になる。
ここまでであれば「ふーん、まあやっぱりこんなもんか」という思いで留まっていただろう。余談だが、Vision Proを装着している人の目の仮想映像を前面に表示する機能「EyeSight」は、想像していたよりも何倍も気味が悪かった。
イマーシブコンテンツに心を奪われた
しかしイマーシブコンテンツには感動した。心の底から感動した。大自然を歩く映像、動物を目の前で楽しむ映像、絶景を見下ろす映像など、リアリティ溢れる体験がいつでもどこでもできるからだ。
特に感動したのは、サッカー観戦映像だ。スポーツは本来であれば「リアルタイムで見てナンボ」だと思うが、すでに見ている試合でもVision Proで改めて見たくなる人はいるはずだ。それほど究極な体験だった。
ゴールのポスト裏に立っているような位置から観戦するPK、ピッチに立っているような視点から観戦席を見渡せるような画角、そしてチーム優勝後のシャンパンかけに参加しているかのような映像には思わず感動せずにいられない。ボールが飛んでくる。シャンパンが降りかかる。観客の熱量を肌で感じる。
Vision Proの魅力は間違いなくイマーシブコンテンツだ。ヘッドセットならではのリアルな映像体験にくわえて、迫力のあるサウンドの影響で、何百万もかけて構築するであろうサラウンド音響付きシアターと同等またはそれ以上の体験ができる。この体験のためであれば、50万円以上支払う人がいても不思議ではない。むしろ費用対効果は良いとも言える。
仮に空間コンピューティングが「未来のコンピューティング」だとしても、空間コンピューティングに惹かれて乗り換える人は限られているだろう。iPadアプリが空間で利用できることは真新しさこそあるものの、既存の体験より優れているとは言いがたい。
Vision Proの強みはイマーシブコンテンツだ。あの没入感と臨場感が生み出す感動は、現状あるAppleデバイスでは実現できない。Vision Proはキラーアプリこそ存在しないが、キラーコンテンツとしてイマーシブコンテンツがある。「既存の体験を空間で利用できる新しいコンピューター体験」ではなく、「極上エンタメ体験デバイス」としてアピールするべきだと思う。
Vision Proの詳しいレポートは以下より読んでもらいたい。