4マス全体への業種別広告費の10年間の変化をさぐる(2018年分)
電通は2019年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2018年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に広告を出稿した業種の4マス(4大従来型メディア。テレビメディア、ラジオ、新聞、雑誌)全体における広告費の10年間での変化を確認する。
直近となる2018年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取り扱う4媒体ではすべてマイナス。「(インターネット広告費全体の)うち新聞デジタル」などインターネット広告費の詳細項目は2018年分から調査・開示されたため、前年比が存在しない。
今報告書にはテレビメディア・雑誌・新聞・ラジオに対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2018年と2008年における対象メディアすべての値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただしテレビメディアでは衛星メディア関連は除かれている。
グラフでは除いているが、単純な総額(4マス限定)では2008年が3兆2995億円、2018年が2兆5751億円とほぼ8割に減少。増加したのは家庭用品と情報・通信のみで、あとはすべて減少。金融危機・リーマンショック、東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れなど、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。
増加した情報・通信は2414.5億円から2849.1億円へと434.6億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し(報告書内の用語説明より、以下同)、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。
他方家庭用品は610.5億円から639.9億円と29.4億円の増加。具体的には「石油・ガス機器、寝具、インテリア、家具、仏具、台所用品、殺虫・防虫剤、芳香・消臭剤など」が該当する。元々額面では小さめな業種だが、データが取得できる限りでは2009年を底値として少しずつ回復基調にある。
10年間で半分以下に額を減らしているのは趣味・スポーツと案内・その他の2業種。趣味・スポーツ用品は多分に若年層の4マス離れに起因するものと推定されるが、今報告書では4マス以外の各業種向け広告費動向が公開されていないため、それを裏付けることはかなわない。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」が該当するため、多分にインターネットにシフトしたものと考えられる。またパチンコ・パチスロ機は業界そのものの低迷も大きな要因だろう。
案内・その他は「案内広告(新聞、雑誌)、臨時もの、連合広告、企業グループなど」が該当する。単純にメディア力、公知力の(相対的)減退を受け、リソース配分の変化が生じたものと考えれば道理は通る。また金融・保険が大きく下げているのは、インターネットなどへのシフトに加え、2006年あたりから急速に広まった消費者金融に対する、いわゆるグレーゾーン金利に係わる問題をきっかけにした大規模なバッシングの風潮に伴い、自主規制も併せ広告出稿が大幅に減少しているとすれば道理は通る次第ではある。
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