女性店員が1回500円で客の顔にビンタするコンカフェ 風営法違反で摘発の訳
大阪・ミナミのコンセプトカフェで女性店員が1回500円で客の顔にビンタするなどの接待営業を行ったとして、経営者の男と店長、店員の男女ら5人が風営法違反の容疑で大阪府警に逮捕された。容疑を認めているという。
アウトとセーフの境界線は?
コンセプトカフェは「コンカフェ」とも呼ばれ、内装や店員の衣装などが何らかのコンセプトで統一された独自の世界観に基づくカフェを意味する。この店もキツネの衣装を着た女性店員が客を出迎えるというコンセプトとなっていた。
もっとも、風営法は「設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」を「風俗営業」の一つとし、公安委員会の営業許可を義務付けている。無許可営業の場合、最高で懲役2年、罰金だと200万円以下に処される。
そこで言う「接待」とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」を意味する。警察庁の通達では、特定の客や客のグループに対して飲食行為に通常伴う役務の提供を超えるほどの会話やサービスなどを行うことだとされている。
カウンター越しか否かや客の隣に座っているか否かを問わないし、会話だけでなく、客とのゲームなども含まれる。よく問題となるアウトとセーフの境界線を挙げると、次のようなものだ。
・店員が特定少数の客の近くにはべり、継続して会話の相手となったり、ビールなどを提供したりするとアウト
・客にビールなどを提供して速やかにその場から立ち去ったり、社交儀礼上のあいさつや若干の世間話を交わしたりする程度であればセーフ
・店員が特定少数の客と遊戯やゲーム、競技などを行うとアウト
・客だけで遊戯やゲーム、競技などを行わせるのであればセーフ
・店員が特定少数の客の近くにはべり、その客にカラオケで歌うように勧めたり、その客と一緒に歌ったり、客の歌に手拍子をとったり、拍手をしたり、褒めはやしたりするとアウト
・客の近くに位置せず、不特定の客にカラオケで歌うように勧めたり、不特定の客の歌に拍手したり、褒めはやしたりするのであればセーフ
・店員が社交儀礼上の握手や酔った客の介抱の範囲を超え、客の手を握ったり、客と身体を密着させたりするとアウト
・店員が客の口許まで飲食物を差し出し、客に飲食させたらアウト
・店員が特定の客の相手としてその身体に接触しながら踊ったり、客の身体に接触しなくても特定少数の客の近くに位置し、継続してその客と一緒に踊ったりしたらアウト
なぜ風俗営業の許可を取らない?
報道によると、今回の店は風俗営業の許可を取らず、オプション料を得て女性店員が客にビンタしたり、客と一緒にインスタント写真を撮影したり、ゲームをしたりする接待営業に及んでおり、府警の指導にも従わなかったことから、摘発に至ったという。
正々堂々と風俗営業の許可を得て営業すればよいのではないかと思うかもしれないが、一方で経営者からすると深夜営業ができなくなるというジレンマがある。接待営業を行う場合、風営法で営業時間が午前零時まで、大阪・ミナミのような特定地域でも条例で午前1時までとされているからである。
食品衛生法の「飲食店」としての営業許可と公安委員会に対する深夜酒類提供の届け出に基づいて営業されているものの、実際には女性店員がカウンター越しに客と長めの会話を交わし、深夜まで営業しているガールズバーなどでも風営法違反だとしてよく問題となる話だ。
今回の店は午前0時までは女性店員が接客し、午前0時以降は男性店員が接客するスタイルであり、その時間帯にも接待営業を行っていたとされる。逮捕された経営者の男は「許可を取ると午前1時以降の営業ができなくなってしまい、収入が減ってしまう」と供述しているという。(了)