15歳から34歳の43人に1人が該当…「ニート」人口比率の推移と現状をさぐる
先日発表された「子供・若者白書」では、いわゆる「ニート」に該当する「若年無業者」の動向の解説も成されている。該当する年齢階層でどれほどの割合なのか、その実情と過去からの動向を確認する。
「ニート」は「NEET(Not in Employment、 Education or Training)」の日本語読みをしたもの。そのまま直訳すると「就業、就学、 職業訓練のいずれもしていない人」となる。今白書では類似概念の「若年無業者」と表現しているが、その定義は「15歳から34歳の非労働力人口(状況をかんがみて求職活動をしていない人など)のうち、家事も通学もしていない者」となっている。求職活動と職業訓練はまったくの同一ではないが、当事者の意志としてはほぼ同じであり、「若年無業者」と「ニート」は大体同列のものと見なして良い。
先行記事【2016年時点で57万人…「ニート」数の推移と現状をさぐる】にある通り、直近となる2016年における「若年無業者」は57万人を計上している。年齢区分をもう少し上にまで上げた「高齢ニート」まで含めると77万人となる。
これらはあくまでも絶対数による人数の推移。多数の他資料からもある通り、日本の若年層人口は漸減傾向にあるので、「若年層全体に占めるニートの割合」は増加しているのか減少しているのか、この動向だけでは判断は難しい。そこで具体的にその状況を逐次算出し、折れ線グラフで推移を示したのが次の図。
データの収録開始年である1995年当時は該当世代の1.2%でしかなかった「ニート」だが、その後上下を繰り返しながら中期的には比率は漸次上昇。2005年には2.0%に達し、2012年には最大の2.3%。その後、やや値を落としたが直近の2016年では再び上昇し最大となる2.3%(2012年と同じ)の値を計上した。約20年で比率としてはほぼ倍増。そして概算だが15歳から34歳が43人集まると、そのうち1人がニートとなる。
このグラフ・値の動向の特徴としては、景気動向に大きく左右される事無く、上昇していた点が挙げられる。2001年から2002年にかけての0.5%ポイントもの上昇は、先行記事で言及した「若年無業者の急増」が、同年齢階層の全体人数の急増による比例的な増加によるものでは無く、何らかの要因によって割合が増加した結果であることを表している。
この急上昇に関しては学校完全週5日制の導入をトリガーとする論説もあるが、そのほかに当時の不況を反映しているとの解釈もできる。しかしその後の景気回復にも関わらず割合は減少していないことから、景気とは大きな関係は無いと推測される。不景気のみ連動し、好景気とは無関係の可能性もあるが、ならば2007年夏以降の金融不況の際にも、同様の大幅な上昇が起きねばならない。だがそのような動きは見られない。
就業構造や社会情勢に大きな変化が無い限り、この比率は引き続き中期的には上昇を続けていくものと考えられる。ただしこの数年間の動きを見るに、現状がほぼ天井のようにも見える。この数年では従来のニートだけでなく、いわゆる高齢ニート(35~39歳)も横ばいの気配を見せているため、来年以降の動向は予想がつきにくい。
今後もニート数の絶対数と共に、該当年齢階層の人口比についても注視する必要があることには違いない。
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