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「15歳から34歳が48人集まると、そのうち1人がニート」ニートの現状は56万人

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 「働いたら負けかなと思っている」は有名なニートのセリフではあるが……

ニートの概念と動向と

若年層の就業状況に係わる問題で、しばしば取り上げられる存在「ニート」。現在日本にはニートに位置づけられる人がどれほどいるのだろうか。内閣府が2015年6月に発表した子ども・若者白書などから現状を確認していく。

「ニート」は「NEET(Not in Employment, Education or Training)」の日本語読みをしたもので、直訳すると「就業、就学、 職業訓練のいずれもしていない人」となる。今白書では類似概念の「若年無業者」で表現しているが、この定義は「15歳から34歳の非労働力人口(状況をかんがみて求職活動をしていない人など)のうち、家事も通学もしていない者」となっている。求職活動と職業訓練はまったくの同一ではないが、当事者の意志としてはほぼ同じであり、「若年無業者」と「ニート」は大体同列のものと見なして良い。

その「若年無業者」の推移は次のグラフの通りとなる。

↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(~2014年)
↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(~2014年)

若年層の人口そのものが減少していることを考慮すると、若年層の若年無業者数がわずかながら減少しているのは当然の話といえる。一方で該当する世代の人口比を算出すると、2012年までは大よそ上昇の動きを示していたが、2013年以降は減少する動きに転じている。

↑ 15-34歳人口に占める若年層無業者の割合推移(~2014年)
↑ 15-34歳人口に占める若年層無業者の割合推移(~2014年)

概算だが15歳から34歳が48人集まると、そのうち1人がニートとなる。

そしてもう一つの問題として考えねばならないのは、従来の日本における「ニート」こと「若年無業者数」の定義からは外れるものの、その状態を維持したまま歳を重ねた「高齢ニート(年齢以外の条件は「若年無業者」と同じ)」の存在。白書では参考資料として35歳から39歳の「高齢ニート」の数を算出しているが、こちらは漸次増加傾向にある。先のグラフの上に、この「高齢ニート」を加えたのが次の図。

↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(参考属性追加)(~2014年)
↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(参考属性追加)(~2014年)

従来の「ニート」層が横ばいからむしろ減少傾向で推移しているものの、「高齢ニート」は一様に増加、昨今では増加に歯止めがかかった状態となり、両者を足した全体としては漸増する動きから、ようやく減少に転じたことが分かる。30代後半以降を「ニート」と称するべきか、根本的な問題はあるが、全体像としても好ましい状況にある。一方現実問題として、一度「ニート」の状態に陥ると、その立場からの脱却が難しいのも事実。それが「高齢ニート」を生み出す原因といえる。

なおここ数年で「高齢ニート」が増加から横ばい、さらには減少の動きを示し、直近2014年ではこの層も含めたニートの累計も3万人の減となっているが、この減少に関して首を傾げるとの意見もある。しかし若年層人口そのもの減少、計算上の誤差(万人単位で四捨五入されている)、フリーターも同時期に3万人減少している(182万人から179万人)ことから、景況感の回復に伴う雇用市場や社会的認識の変化など、多数の要因を挙げることができる。特段異様な結果ではない。

ニートになった理由は多種多様

白書では「若年無業者」について、「仕事に就きたいけれども求職活動をしていない(就業意欲はある)」「仕事に就きたくない・就けない(就業意欲が無い)」それぞれの立場において、その理由の調査結果(最新は2012年のもの)を公開している。原本データの「就業構造基本調査」を元に詳しい値を抽出し、状況を確認する。

↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)(2012年)(最新)
↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)(2012年)(最新)
↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)(2012年)
↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)(2012年)

・「病気・けが」などは仕方が無く、回復すれば容易にニート状態から脱せられる可能性は”比較的”高い。

・「学校以外で勉強をしている」などは先を見据えた上で自らその立場についている「若年無業者」であり、問題視されている「ニート」とは本質的な意味合いが異なる。

・「急いで仕事につく必要がない」「特に理由は無い」は、世間一般的に語られる「ニート」の筆頭に挙げられる。

・「探したが見つからない」「希望する仕事がありそうにない」「知識・能力に自信がない」は、「個人の問題(努力不足、現状認識不足など)」「雇用環境の問題」双方の可能性、あるいは両方の複合的な結果による場合があり、一概に振り分けるのは難しい。

「職に就きたいという思いはあるが、求職はしていない」人の場合、現在ケガや病気などで求職がかなわない事例がもっとも多く26.5%。次いで資格取得のための勉強をしている、いわゆる「浪人状態」の人。そして「職を探したが見つからない」が続く。一方「就業そのものを望んでいない」人もケガ・病気によるものが最多で3割近く。次いで資格取得のための浪人として。上位2項目への偏りがやや大きいものの、就業希望者と大きく変わるところは無い。

今調査の限りにおいても、ニートと仕切られた人について、全員を同一状況・事情による「ニート」とまとめるのには多分に問題があることが分かる。また、両パターンで「その他」の回答が多いことから、さらに提示項目だけでは説明しきれない、個々の多種多彩な事情も想定される。

今件の「若年無業者(ニート)」問題は「ニートの状態とは、そもそも何が問題なのか」といった根本部分から考察し直す必要があり、そして解決は一筋縄ではいかない。その実態が、今回のデータからあらためて想像できよう。

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ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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