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イスラエル軍「ハマスからのロケット弾迎撃に向けて"アイアンビーム"の試験運用を許可」報道

佐藤仁学術研究員・著述家
アイアンビーム(イスラエル国防省提供)

「1回の3.5ドル(約500円)で迎撃」

2023年10月7日に、イスラエルに向けて武装組織ハマスから大量のロケット弾が発射された。ハマスからの執拗なロケット弾攻撃は続き、イスラエル国防軍によるとハマスが攻撃してから2週間で約7000発以上のロケット弾がイスラエルに向けて撃ち込まれている。ハマスからの大量のロケット弾の攻撃に対して、イスラエル軍は朝から晩まで「アイアンドーム」で迎撃してイスラエル領土をロケット弾から防衛している。イスラエル国防軍は武装集団ハマスからのロケット弾やミサイルをアイアンドームで迎撃している。

そして2023年10月26日にはイスラエル国防省が防空システム「アイアンビーム(Iron Beam)」の試験運用を行うことを許可したと様々なメディアで報じらていた。2023年10月15日にはアイアンビームでの防衛を検討していることを明らかにしたと報じられていた。その報道があった直後には、SNSではイスラエル軍がアイアンビームを使用してハマスからの攻撃を迎撃しているフェイク動画が多く拡散されていたが、それらは合成されたフェイク(嘘の情報)である。まだイスラエル軍はアイアンビームでハマスからのロケット弾の迎撃は行っていない。

2022年4月にイスラエル国防省は、上空からの攻撃ドローンやロケット弾にレーザーを使用して防衛する防空システム「アイアンビーム」の試験を行い上空のミサイルと攻撃ドローンをレーザービームで撃墜することに成功した。撃墜に成功した動画も公開していた。当時のイスラエルのベネット首相は自身のツイッターで「イスラエルはついに新たな『アイアンビーム』のテストに成功しました。これは世界初のエネルギーを元にした兵器システムで上空のロケット弾やミサイル、攻撃ドローンを1回の発射につき3.5ドル(約500円)で撃墜できます。SF(サイエンス・フィクション)のように聞こえますが、リアルです」と語っていた。

イスラエル軍は2021年にレーザービームによる実証実験も行い、1キロメートル先の上空の攻撃ドローンを撃墜していた。現在は1キロ先の上空のドローンを撃墜できるが、イスラエル軍は将来には100キロワットのレーザーで20キロ先の上空の攻撃ドローンも撃墜することができるようにするとしていた。

アイアンドームよりも低コスト

イスラエル軍は現在「アイアンドーム」で武装集団ハマスからのロケット弾を迎撃している。毎日アイアンドームの精度の高さを見せつけている。アイアンドームは地上にいる人たちや建物への攻撃を回避させダメージを最小化させることが目的である。アイアンドームは上空のロケット弾やドローンをレーダーが察知すると、地上からミサイルが発射されて、地上の標的が攻撃されて大惨事になる前に、敵のロケット弾や攻撃ドローンを上空で爆破させる。

武装集団ハマスはイスラエルへの奇襲から2週間で7000発以上のロケット弾を発射させて攻撃を行っており、イスラエル軍はアイアンドームで迎撃しているがアイアンドームの迎撃ミサイルはかなりコストがかかるし、在庫が不足してくる懸念もある。アイアンビームはアイアンドームよりも低コストで開発、運用ができる。

米国のバイデン大統領が2022年7月にイスラエルを初めて訪問した時にも、ベングリオン国際空港に到着後に、空港に設置されたイスラエル製のドローン迎撃システムの「アイアンビーム」や「アイアンドーム」などをイスラエルの国防大臣らの案内で視察していた。

▼アイアンビーム

▼イスラエル国防省がアイアンビームの試験運用の許可したと伝えるメディア

▼ベネット首相(当時)「1回の発射につき3.5ドル(約500円)で迎撃できます」

▼2022年7月にイスラエルを訪問したバイデン大統領がアイアンドーム、アイアンビームを視察

アイアンビームの前で談笑するバイデン米港大統領ら
アイアンビームの前で談笑するバイデン米港大統領ら写真:ロイター/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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