アップルパークを見てきた
1年半ぶりにシリコンバレーにやってきた。やはり、活発な賑わいはこれまでとは変わらない。むしろ、これまで以上かもしれない。グーグルやフェイスブック、アマゾンなどのIT産業に加え、テスラという電気自動車企業も拠点としている。iPS細胞の実用化を目指すバイオ産業も含め、新しいイノベーションを求めて集結する街である。
自動車産業はデトロイトからシリコンバレーに移る気配を見せており、フォードやBMW、トヨタも研究開発拠点を置くようになった。電気自動車のテスラモーターズ社に行ってみると、ウィークデイの駐車場には客のクルマがあふれている。このため駐車場近くの道路わきに何とかして止められるように整理する誘導員が複数人立ってクルマを誘導している。これまで、シリコンバレーで活気を見分けるには駐車場のクルマがいっぱい入っているか、ガラガラかで判断するとよいと言われている。筆者は、シリコンバレーを見て何十年にもなるが、満車の企業でさえ、駐車場に誘導員が立っている風景を見たことがない。テスラはそれほどまでにさまざまな企業が訪れている。
米国時間2月22日にアップルが新社屋「アップルパーク」を発表し、日本国内でもパソコン系やモバイル系のメディアでも紹介されている。早速行ってみると、新社屋は、まるで宇宙ステーションを彷彿とさせる形をしており、ドーナツ状に取り巻く格好をしている。4月から入居できるように工事を進めており、クーパティーノ市に今ある本社から総勢1万2000名の社員が移転するまでにさらに6カ月以上かかるとみている。写真を撮影した位置は一般の道路であるが、その道路にはすでに「Apple Parkway」という名前がついている。
全体の面積は175エーカーというから、東京ドーム約15個分の広さになる。ドーナツの内側が社員だけが入れる場所である。これまでの閉鎖的な施設ではなく、一般の消費者が入れるカフェやビジターセンター、アップルストアも設け、親しんでもらおうと開放する地域もある。
ただ企業であるから、研究開発施設には厳重なセキュリティが施され、担当者以外の出入りはできない。社員向けにはフィットネスセンターや、席数1000人分を収容できる「スティーブ・ジョブス・シアター」と呼ばれる大ホールを設置する。ドーナツ状の内側には社員が走ったり歩いたりするランニング/ウォーキングのコースを2マイル(3.2km)に渡って設けているという。果樹園、草地、人工池もあるとしている。
最大の目玉は、環境に配慮していること。建物に供給する電源は100%再生可能エネルギーだけで賄う計画。建物の屋上に17MWのソーラーパネルを敷き詰め、できるだけ自然換気を行うことにしている。シリコンバレーでは年間を通じて穏やかな気候に恵まれており、1年のうち9ヵ月は暖房も冷房も不要だと見込んでいる。
(2017/02/23)