三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とみずほFGがデジタル通貨で連携、その狙いとは
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とみずほFGは企業間決済に使うデジタル通貨で連携する。MUFG傘下の三菱UFJ信託銀行の共通インフラで2024年にも発行するデジタル通貨の枠組みにみずほが参加し実用化を目指す(5日付日本経済新聞)。
このデジタル通貨とは、ステーブルコインと呼ばれるデジタル通貨となる。法定通貨と価値を連動させることでビットコインのように価格が大きく変動しないように設計されている。
価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられる。
米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し、価格を連動させる「暗号資産担保型(仮想通貨担保型)」、金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」がある。
2022年5月に暗号資産(仮想通貨)市場でステーブルコインとされた「テラUSD」が一時8割近く下落した。仮想通貨市場からの資金流出を背景に、価値を保つためのアルゴリズムが機能しなくなったのである。
テラUSDは4つの種類のうちのアルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」であった。発行主体が需給の状況を常にチェックしながら供給量を調節する。テラUSDは価格が1ドルを上回っている場合は供給量を増やして価値を低下させ、逆に下回っている場合には消却などで供給量を減らして価値を上昇させる。
ところがビットコインなど仮想通貨市場の急落によりアルゴリズムが機能しなくなったのである。
これを受けて日本では、それまで暗号資産の一種とされてきたステーブルコインから法定通貨担保型を切り出し、発行総額の100%をカバーする裏付け資産の保有義務づけなどの規制を盛った改正資金決済法を施行した。
これを受けて銀行、信託会社、資金移動業者に限って発行できるようになったのである。
安全性が確保されたステーブルコインを利用することによって、コストのかからない即時送金が可能となる。企業間決済の中でも複雑で時間やコストがかかっている貿易決済の分野などでも活用できる。
現在、多くの国際送金は国際銀行間通信協会(Swift)のシステムを通じて決済し、相手に届くまで2営業日以上かかる。また手数料もかかることで、ステーブルコインを使った決済が拡がれば、期間とともに費用負担も軽減できる。ただし、まだ実験段階ではある。
ちなみに、規制については日本では6月にステーブルコインの取り扱いを定めた改正資金決済法が施行されたが、欧州は来年の予定で、米国ではいまだ議論が続いている。