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【時代が変わるージェンダー】女性たちはすでに男性たちを引き離している 先進各国のデータを英紙が分析

小林恭子ジャーナリスト
英「チャンネル4ニュース」の司会者ファティマ・マンジ氏(TV画面を筆者撮影)

 英国でテレビのニュースを見ると、女性が司会者、リポーター、専門家、政治家、市民組織の代表、通りを行く市民として登場することが多い。

 テレビに登場する人、そして制作者側でも女性の比率を増やそうという英国ニュース界の試みがよく表れている。

 しかし、筆者がよく見る夕方の「チャンネル4ニュース」をはじめとして、いくつかの報道番組では女性の比率が非常に高く、「女性ばかり」の印象がある。

 報道番組では女性の活躍が目に付いても、ほかの面ではどうなのか?「まだまだ平等になっていない」と感じる人が、日本でも多いのではないだろうか。

 しかし、データを見てみると、複数の先進国において実は女性たちは男性たちを引き離した状態にあるという。

 そんな記事が英フィナンシャル・タイムズ(FT)に掲載されていて、筆者は驚いた。「そうだったのか」「もうそうなっていたのか」という思いだ。

 この記事の中では日本は紹介されていないが、大学の受験者の成績、企業の就職試験などで、女性が上位に来る傾向がすでに報道されている。現実では、日本でも女性はすでに先を行っているのかもしれない。

 FTの記事から、若干紹介してみたい。

大学進学率が女性のほうが高い

 分析の対象は先進国となるが、英国、米国、カナダ、韓国、スペイン、ノルウェーにおいて、女性のほうが男性よりも大学進学率が高い結果が出たという。

 雇用率も、女性のほうが高かった(英国、米国、オーストラリア、カナダ、フランス、ノルウェー)。かつては「誰が育児を一番担当するの?」という問いには「女性だ」という答えがパターンとなっていたが、今や「高等教育を受けるのは誰?」や「より高い収入を家に持ち帰るのは誰?」といった問いにも、答えは「女性だ」になってきたという。

女性は家族のケアをより多くしているが、働き、勉強もする

 英国の20ー24歳の男女の例を見ると、女性は「家族の面倒を見る」では男性よりも担当する比率が高い。しかし、その一方で、「働いている」及び「学生として勉強している」という項目では、男性よりも若干高い比率となっていた。

学生ではなく、無職あるいは求職中の男性が増加

 英国、米国、カナダ、フランスの20ー24歳では、学生として勉強しているわけではなく、かつ無職あるいは求職中の男性が女性よりも多くなっている。

 英国の21-26歳では、女性の収入のほうが男性の収入の上を行くようになった。一方、米国の若者層では男性の収入のほうがより高い。

記者が導き出した結論は

 こうした結果から様々な結論や政策提案が可能だろう。

 FTの記者は自分なりの分析を記している。

 まず極右思想を支持する若い男性たちが増えており、特に仕事がなかったり、高等教育に進まなかった人にその傾向が強いという。社会の一員として役割を持つことが少ない若者層が暴動などに参加しやすいと指摘する。

 また、女性が高学歴化、高収入化に進んでいるということは、彼女たちと同等の男性たちの比率が少なくなっていることも意味する。こうした女性たちは、男性に養ってもらうことを期待しない交際をするようになるだろう、という。

 今回紹介された男女は20代だった。彼女・彼たちが30代、40代、そしてさらに年を重ねていくうちに、社会の考え方やシステムが相当変わっていくのではないだろうか。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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