日銀によるイールドカーブコントロール解除の行方、慎重にワンクッション置いた後となるのか
日本証券業協会が20日発表した公社債の投資家別売買動向(短期国債を除く)によると、海外勢による1月の国債の売り越し額は4兆1190億円となり、過去最大となった。これについてはある程度予想されていたことであったが、これで生損保が超長期債を過去最大の4462億円売り越したことも明らかとなり、市場にとってサプライズとなった。
日銀の金融政策の修正を睨んでヘッジファンドが10年債主体に売り浴びせといったイメージとなっていたが、そこには国内の大手投資家である生保が保有している超長期債を売却していたのである。
多くの債券市場関係者はこれまで早期のイールドカーブコントロールやマイナス金利の修正はないとみていたと思われる。しかし、昨年12月20日の金融政策決定会合における長期金利レンジの拡大を受けて、その見方に変化が起きた。
日銀の総裁・副総裁が3月から4月にかけて交代する。その際、誰が総裁になっても政策修正を行ってくるのではとの見方が急速に広まったのである。
1月の生保による超長期債の売り越しもそれを睨んでの動きであった可能性がある。
政府は14日、日銀の黒田東彦総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した。副総裁に氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を充てる案も示した。
これまでの植田氏の発言などから、まずはイールドカーブコントロールの修正を行い、その後、物価などの状況を確認しながらマイナス金利の解除を行う可能性があるとの見方が強まっている。
4月までの会合でYCCもマイナス金利も解除して、通常の緩和策となるゼロ金利政策に戻すべきと考えるが、どうもそのような期待はやや過激に映るらしい。過去のゼロ金利政策の解除や量的緩和の解除に対する政治家などからの批判も強い。マイナス金利の解除はほとんど影響はないはずだが、これも実質的な利上げに映るようである。
このように利上げ方面には過剰なほど神経質になってしまっていることで、イールドカーブコントロールの修正も慎重に行ってくる可能性が高い。
オーストラリアのように一気に解除が望ましい。しかし、オーストラリアは失敗したとの見方もあるようだ。このため、たとえば長期金利のレンジを0.75%や1%に拡げるなり、コントロールの対象を10年から5年や2年にするというワンクッションを置くことが予想される。
慎重にワンクッション置いた後、状況をみながらYCCを解除という手順を踏んでくる可能性は新しい体制で確かにありうるか。しかし、いつから日銀はインフレファイターでなくデフレファイターになってしまったのだろう。