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エリザベス女王が愛したハイクレアと日本の競馬

勝木淳競馬ライター
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

英国のエリザベス女王が(日本時間)9日未明に96歳で逝去された。今年は女王即位70年の節目の年。英国王室主催の競馬開催ロイヤルアスコットは今年、「プラチナム・ロイヤルアスコット」として開催された。王室と競馬の関わりは深く、エリザベス女王の軌跡の傍らにも競馬があった。即位後まもなく1953年にはオリオールで英国ダービー2着。ダービーはこれが最高成績で勝利こそ飾れなかったが、ほかの英国クラシック(2000ギニー、1000ギニー、オークス、セントレジャー)を制覇。ロイヤルアスコット開催時にはウインザー城から馬車で来場。その帽子の色まで注目を集めた。

日本の競馬界との関わりでいえば、まずエリザベス女王杯があがる。1975年、女王が国賓として来日したことを記念し、翌年創設されたのは有名な話。当時は牝馬三冠最終戦として行われ、秋華賞が新たに作られたことを機に古馬に開放。秋の女王決定戦はメジロドーベル、アドマイヤグルーヴの連覇、トゥザヴィクトリーの追い込み、英国スノーフェアリーの圧巻のパフォーマンスなど現在に至るまで数々の名勝負に彩られた。

今年6月、グレートブリティッシュレーシングインターナショナル(GBRI)は女王の即位70周年にあたり、世界各国にあるエリザベス女王の名がつくレースに記念品を贈呈することを発表していた。日本のエリザベス女王杯もJRAは今年、正式名称を「エリザベス女王即位70年記念 第47回エリザベス女王杯」に変更していた。

エリザベス女王と日本競馬との関係はもっとある。ディープインパクトの母ウインドインハーヘアの母バークレアは女王の所有したハイクレアの仔。ハイクレアの産駒といえば日本に種牡馬として輸入されたミルフォードもいる。日本のミルフォード産駒からは1992年桜花賞3着ラックムゲンが出た。ラックムゲンの血はチャレンジセイエンからゴールデンリーフにつながり、いまも産駒が生産される。

またハイクレアの仔バークレアといえば、ウインドインハーヘアの姉にあたるインヴァイトも日本に輸入され、2003年NHKマイルC覇者ウインクリューガー(父タイキシャトル)を輩出。その姉リザーブシートからは2006年マーメイドSを勝ったソリッドプラチナムもあらわれた。またバークレアの一族にはロジクライ、ビリーバーの名前もある。

ハイクレアの仔ハイトオブファッションはナシュワンを出し、英2000ギニー、英国ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを勝利。やがて凱旋門賞馬バゴを送る。日本でバゴといえばグランプリ3連勝のクロノジェネシスの父だ。

ハイクレアを通じ、血統の世界で広がり、女王自身も競馬に情熱を傾け、即位期間を通して競馬の発展に尽力されてきた。その心を競馬を愛する者たちで受け継いでいきたい。

競馬ライター

かつては築地仲卸勤務の市場人。その後、競馬系出版社勤務を経てフリーに。仲卸勤務時代、優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)、AI競馬SPAIA、競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にて記事を執筆。近著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ(星海社新書)

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