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1月17、18日開催された金融政策決定会合の主な意見

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は26日に、1月17、18日開催された金融政策決定会合の主な意見を公表した。「金融政策運営に関する意見」のところを確認してみたい。

 「経済・物価情勢を踏まえると、イールドカーブ・コントロールの運用も含め、現在の金融緩和を継続することが適当である」

 昨年12月20日は債券市場の機能改善のためもあり、長期金利のレンジを拡大したが、すでにイールドカーブ・コントロールの運用の限界が露呈した上、債券市場の機能はさらに後退している。

 「物価見通しを踏まえると、現在は、金融緩和の継続により経済をしっかりと支え、企業が賃上げしやすい環境を実現することが重要である」

 日銀はいつから賃上げを目標としているのか。そもそも異次元緩和を10年も行ってきているのにその効果が見えず、それを続けて賃上げが可能というのであろうか。

 「2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には時間を要するという物価見通しを踏まえると、現行のイールドカーブ・コントロールを継続していくことが必要であり、その点について丁寧な説明を行うとともに、適切な金融調節を継続することが重要である」

 消費者物価指数はすでに4%なのだが。現行のイールドカーブ・コントロールを継続していく、丁寧な説明を求めたい。

 「物価安定の目標の達成には経済と物価の前向きな循環が不可欠であり、その背後にあるメカニズムや持続性を見極めるとともに、対外的に分かりやすく説明する必要がある」

 いま日銀が行っていることが、どのようなメカニズムで経済と物価の前向きな循環に働きかけるのか、わかりやすく説明してほしい。

 「持続的な賃金上昇が見込めるまで、企業の変革努力を後押しするため、債券市場の機能度にも留意しつつ、イールドカーブ全体を抑制することが必要である」

 イールドカーブ全体を抑制したら、どうして賃金が上昇し、日銀のいう物価目標を達成できるのか。

 「前回会合で決定したイールドカーブ・コントロールの運用見直しは、あくまでも金融市場の機能改善を通じて金融緩和をより持続可能とするための措置である」

 物価や景気、海外の金利動向と見合っていない長期金利を日銀が形成しようとしているから、歪みが発生しており、それを少しでも解消しようとした措置ではなかったのか。

 「前回会合で決定したイールドカーブ・コントロールの運用の見直しが市場機能に及ぼす効果については、いましばらく時間をかけて見極める必要がある」

 日銀は12月の調整は利上げと認めていないが、仮に利上げだとして、FRBやECBの利上げは毎回のように行われていたように思うのだが。

 「市場が落ち着き、市場機能が回復するにはやや時間がかかる可能性がある。金融緩和の継続が必要であること、日本銀行の緩和姿勢は変わらないこと、また、賃金の上昇はこれからなので、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には時間がかかることを丁寧に説明していくべきである」

 債券市場の機能回復に必要なのはイールドカーブ・コントロールの撤廃以外にはない。異次元のままの金融緩和の継続が必要であることの説明もほしい。物価安定の目標の持続的・安定的な達成には時間がかかると言うが、このようなことをいつまで続けるというのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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