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中国激怒:Huawei宛小包をアメリカへ誤送?

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
HUAWEI(写真:ロイター/アフロ)

 米宅配大手FedExが日本から発送した中国Huawei宛の小包を米国に「誤送」し、ベトナム発アジア地域同社宛小包も米国に送ろうとした。これに対し中国は国際輸送安全を脅かす暴挙として激しく抗議し、ネットが炎上している。 

◆この時期に「誤送」があり得るのか?

 米国際宅配大手のFedEx(フェデックス)が、日本から中国のHuawei本社に送った荷物二つを、Huaweiに無断で米国に送ったほか、ベトナムからアジア地域(香港とシンガポール)のHuawei支社に送られた小包二つを米国に迂回させるべく差しとめていたことが判明した。そこには「この荷物には疑義あり」というレッテルが貼ってあったとのこと。

 5月24日にHuaweiの広報担当がロイター社に明かしたことにより国際社会全体の知るところとなった。

 最初、Huaweiの自作自演だろうという噂までが流れたが、5月28日にFedExが「誤送」を認め謝罪した。しかしアメリカ政府など、第三者の指示を受けて意図的に誤配送をしたわけではないとFedExは弁明している。

 5月15日にはトランプ大統領が、米国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を、米企業が使うことを禁止する大統領令に署名したばかりだ。通信機器製造のための半導体などの必要部品の輸出やサービスも禁止している。トランプ大統領は特定の企業を名指しはしていないが、世界の誰もがHuawei(華為技術)を念頭に置いたものと見ている。

 特に中国ではそれ以降、中国政府とHuaweiの一体化が顕著に進み始めていた(参照:5月22日付けコラム「Huawei一色に染まった中国メディア――創設者が語った本音」)。そのような状況の中で起きた事件だけに、中国メディアの対米抗議は尋常ではない。米政府の指図なしで、このようなことが起きるはずがないだろうと、中国大陸のネットは怒りで炎上した。

◆噴出する中国メディアの対米抗議

 本原稿を書いている時点で、できるだけ時間的に近い順番から主たるものを拾ってみるが、あまりに多いので順不同になることもある。

1.中国青年網

  「華為の小包を遮断し米国に送ったFedExは、どのような責任を取れるのか?」(2019-05-29 13:45)。

2.環球網

 「 FedExの華為小包“誤送”、外交部:華為と中国の民衆に合理的な釈明を」(2019-05-29 15:27)

3.共青団中央

 「恐るべし!FedExが“華為小包を拉致”、中国の学者:暫時業務停止命令を」(2019-05-29 09:18)

4.人民日報・海外版(環球時報の報道を転載)

 「FedExが華為の小包を誤送 ただ単に仕事の手落ちか?」(2019-05-29 06:40)

5.CCTV新聞

 「FedExが華為貨物誤送を謝罪:少量の華為貨物が誤配送されただけだ」(2019-05-28 18:30)

6.新浪軍事(環球時報から転載)

 「FedExは本当に、ただ単に華為小包を誤送しただけなのか?」(2019-05-28 18:54)

 漢字を拾い読みして頂ければ(中にはPDFなど英語の文章も貼り付けてあるので)、大体の意味は通じるものと思うが、どの記事も激しい怒りに燃え上がっており、収まりそうにない。

 重複している主張が多いので、一つ一つに関しての説明は省略する。主たる主張を列挙すると、以下のようになる。

 ●もし逆に、某国からアメリカのハイテク企業宛ての小包が、中国の国際輸送会社の「誤送」により、中国に送られたとしたら、アメリカ政府およびメディアは、どのように反応するか。アメリカ社会はどのように動くか、考えてみるといい。

 ●なぜ、ここまで華為だけに誤送が集中しているのか、米国は説明する義務がある。

 ●アメリカ商務部はロイターの質問に黙秘を続けているが、きちんと説明しろ!

 ●ウォールストリート・ジャーナルは5月27日、「華為勃興の過程で窃盗と不正当な競争を伴った」という長文の報道をしたが、一つたりとも証拠を出しておらず、「中国のことだから、こうあるに違いない」という既成の観念から一歩も出ていない。証拠を出せ!

 ●アメリカのメディアは、客観的事実に基づいて報道するという原則も忘れたのか?

 ●アメリカ国家安全保障局(NSA)が運営する極秘の通信監視プログラム(盗聴プログラム)でアメリカが盗聴をしていたことはスノーデンが暴露し、証拠が出そろっている。この「プリズム事件」を忘れたのか?情報安全を脅かしているのは、どの国なのか?

 ●上記の報道以外で、「これは国際輸送安全を脅かすテロ事件だ」という書き込みも見られた。

◆反米運動が火蓋を切るか

 もし米当局が背後にいたのだとすれば、火に油を注ぐようなものだ。着火点を超えて、全中国が反米運動へと燃え上がる気運を刺激しかねない。そうでなくとも習近平国家主席は反米運動にゴーサインを出す段階に差し掛かっていた。中国は既に、レアメタルの対米輸出禁止を断行したら、アメリカの軍事産業がどれだけの打撃を受けるかをシミュレーションしている。

 Huaweiの任正非CEOは「中国のメディアは、アメリカを批難しないでほしい」と、5月21日のインタビューで語っているが(参照:5月22日付けコラム「Huawei一色に染まった中国メディアーー創設者が語った本音」)、事ここに至ってもなお、同じことを言い続けるだろうか。

 習近平の指示がなくとも、中国の反米運動は、もはやボトムアップで火蓋を切る勢いだ。これに関しては、追って考察する。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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