【川崎市中原区】クリスマスは劇場で同じ街の人たちと心の対話を 一人芝居から得る「思考」はギフト
先週、静岡で大先輩女優の一人芝居を観てきました。
一般的にはあまり馴染みがないかもしれませんが、私の携わるジャンルの芝居は「小劇場」というジャンルで、400席くらいまでの小さめの劇場で上演される演劇を作っています。
「小劇場」という響きから下積み?と思われることも多いのですが、観客との距離が近い演劇ジャンルの名前なので、下積みということではありません。 ここから芸能界や映像に出るようになる人もいますが、映像よりもライブ(舞台)にこだわる俳優が多くいるジャンルです。
この、ライブで作品を観る機会は、コロナ禍においてはかなり長い間、失われてしまったものでした。オンライン演劇など、いろいろな試みが進んだことは特筆すべきかもしれませんが、実際に目の前で俳優が震わせた空気を肌で感じることが、人間の感性に及ぼす影響がどれだけ大切だったか、失われて初めて気づいたという人も多くいました。
一人芝居とは
演劇が小学校の教育に組み込まれていない日本では、芝居を観たことがない、という人もいますよね。ミュージカルなら…という声はちらほら。ディズニーや劇団四季のおかげで、かなりミュージカルというジャンルは浸透してきています。
そういう人も「演劇はちょっと難しそうだし…」と言うことが多いです。しかも「全く知らない人が出ている芝居を観る動機がない!」とおっしゃる気持ちもよくわかります。そんな人にこそ勧めたいのが、一人芝居です。
一人芝居とは、その名の通り、出演者がたった一人で演じる芝居なのですが、これこそ、今観るべきジャンルである、と私は言いたい!
その理由は…
- 小さい空間で上演されることが多いので、間近で観られる
- 比較的チケット代も安価
- 自分自身の心と対話ができる
というわけで、前置きが(非常に)長くなりましたが、25日のクリスマスの日に、元住吉の国際交流センターで行われる一人芝居「橋」を今観るといい理由を、本日は力説しちゃいます!
「橋」ってどんな話?
ロシアで初めてDVホットラインを開設して、女性のための権利活動に関わる支援団体「ANNA」を創設した女性、マリーナ・ピスクラコヴァに取材して書かれた「ドキュメンタリー演劇」です。
え、なんか重たそう?
確かにテーマはエンタメというよりオモタメですね(笑)。
こちらの作品を昨年10月に観て、どうしても川崎に呼びたい、と思い入れ、今回実現させたコスギアート・ラ・ファブリカの横井さんにお話を聞きました。
「ロシアで女性の人権活動をするマリーナは、相談の現場で日々、被害者からの切迫した訴えかけに接し、時にはあきらめと、絶望や死を予感させるような問いかけに遭遇します。
自身も理不尽な脅迫を受け、家族に危険が及ぶかもしれない、という恐怖とも戦わなければいけません。こういった現場のリアルを、演劇作品として芸術性高く伝えられるのだということに魅力を感じ、川崎でもぜひいろいろな人にこの面白さを体験して欲しいと考えました」
みどころ
この作品は、東京演劇アンサンブルという劇団に所属する洪美玉(ほん みお)さんがマリーナのモノローグ(一人語り)の形で演じます。
小劇場の究極の形である一人芝居は、俳優が身一つで作り出す世界で、そこに一度引き込まれると、いつのまにか観客として見ているはずの自分の思考が巡り始めます。
演じる側が一人であるため、その対話の相手は自分かもしれない、と錯覚する瞬間が何度も訪れます。時には、自分がその人物に同化して思考を始めるのです。(この感覚は、一度味わってみるとなかなかクセになるものです)
さらに、今回はピアノの生演奏による音楽や映像演出もあり、臨場感を持って物語が胸に迫ってくるのだそう。
自分の住んでいる街で、このような機会があるなら、体験してみたいと思いませんか?
アフタートークも
演劇は確かに、わかりやすいものではない、と私は思います。
それは、人間というものが、そもそもわかりやすくないからなのですが、それでも「理解をしたい」と考えることが思考につながりますよね。
この舞台には、ちゃんとアフタートークがあり、「わからないこと」をそのままにしない工夫も。
アフタートークに来てくださるのは、東京新聞記者として積極的な言論活動をしている望月衣塑子さんです。(有名な方ですね!)
「橋」の上演時間自体は1時間ですが、それと同じ長さの1時間たっぷり、望月さんとのアフタートークセッションが用意されています。
横井さんは本気で街に「対話の場」を開こうとしているんだな、と感じます。
対話の重要性はいまさら語ることはないかもしれませんが、それこそが本来、人間が人間たる所以であるといってもいいほど、根源的なものですものね。思考をとめない、誰かと語ることをやめない、それがこのコロナ禍…のみならず、先が見えにくい時代を乗り切っていく上でもとても大切だと思います。
申し込み方法
興味をもったら、こちらのフォームから、事前予約ができるので、ぜひ予約してみてください。前売り料金でお取り置きができます。(チケットの精算と引き換えは、当日開演1時間前から会場でできます)。
コスギアート ラ・ファブリカ実行委員主催 洪美玉 一人芝居 「橋」
日時:2021年12月25日(土)
場所:川崎市国際交流センターホール(川崎市中原区木月祇園町2-2)
開演 :マチネ=13時〜 15時30分/ソワレ=17時〜19時30分(開場はそれぞれ30分前)
料金:前売り=2,800円 / 当日=3,000円
出演: 洪 美玉(東京演劇アンサンブル)/ピアノ 菊池 大成
作:ポーラ・シズマ―
演出:志賀 澤子
(マチネ・ソワレ両公演とも東京新聞記者の望月衣塑子さんによるアフタートークあり)
私もマチネ(昼公演)にお邪魔するつもりです。
記事を読んでくださった方と、同じ空間を共有できたらこんなに嬉しいことはありません!
クリスマスに、大切な人を思いながら
ここから先は、クリスマスになんでDVをテーマにした「オモタメの演劇」を観なきゃいけないのさ、と思った人だけ読んで欲しいのですが(笑)
クリスマスって、自分以外の誰かの幸せを祈ることができる特別な日なんですよね。
この作品を共に観て、いろいろと話し合える関係の人となら、何も心配せずに一緒に生きていけるんじゃないかな、と思いますし、もしクリスマスを一緒に過ごす相手がいない、と言う人も、ここにくれば「自分自身と対話」でき、また大勢のひとと同じ体験をすることで一体となり、意義のある時間を過ごせるのではないかと思います。
夜はデートや家族との会食があるよ、と言う方はマチネ(昼公演)を、聖夜に自分自身の心に明かりを灯したい、という人には、ソワレ(夜公演)をお勧めします。