少年野球指導者が向き合うのは「外野」の声か、目の前の子供たちか…上原浩治が伝えたいこと
雲一つない晴れ渡った空の下、淀川の河川敷には、今年もたくさんの少年野球チームが集っていた。
地元・大阪には、軟式野球大会に冠をつけていただき「上原浩治杯」という大会がある。今年で20年目、20回目という節目を迎えた。参加チームは小中学生の部門を合わせて96チーム。17日の開会式で始球式を務めることになり、現地へ行ってきた。
始球式でストライクが入らなかったのはご愛敬。野球の競技人口が減少していると言われる中、大阪という土地柄もあるのだろうが、「野球熱」の高さに驚かされた。それでも、なかなか出られる大会がないという声も聞いた。京都などからもチームが参加していたのは、そういう背景もあるのかもしれない。
河川敷は、私にとって「野球人生の原点」のようなものだ。野球が大好きで、球拾いも嫌いではなかった。河川敷にはフェンスがない。外野を守っていたとき、頭を越えた打球は隣の面まで飛んでいく。どこまでも転がっていく白球を必死になって追いかけた。めちゃくちゃ疲れて、息が切れて、でも、楽しかった。
今回は主に中学生の試合をみていたが、試合中はもっと笑顔でプレーしてもいいのかなと思った。試合はとにかく明るく、楽しく!プレーをすればいいと思う。
小学生の試合では、バントと盗塁の禁止ルールを設けたらいいというのが持論だ。自主的なバントならいいが、サインによるバントは、子供たちの大事な1打席を奪ってしまう。盗塁は技術が未熟な投手がクイックなどでフォームを崩しかねない。そもそも二盗はおろか、三盗だって小学生の捕手の肩と、走者の足の速さを比べたら刺すことは難しい。
それなら、盗塁を禁止にして、投手と打者が力一杯の勝負を楽しめばいいのではないか。クイックも牽制も、技術は上のレベルになれば、必要に迫られて練習する。小手先の技術は子供のときにはいらないと思うのだが、皆さんはどうだろうか。
私自身は決して、子供たちに「甘い」とは思っていない。試合は明るく、楽しく!を理想に掲げたが、練習は「苦しく、厳しく」取り組んでほしいとも思っている。もちろん、指導者が暴言を吐いていいということではない。週末の練習では暑さ対策をしながら、4、5時間の練習に汗を流すときがあってもいいと思う。ふざけた態度は、指導者である大人に叱られて当然だと思っている。怒鳴ったり、殴ったりは論外だが、「何が大事で、何がいけないか」、子供を預かる大人の責任まで放棄してはいけないと思う。
こういうことを書くと、上原は「昔気質だ」などと批判の声が出るかもしれない。現場を預かる大人たちもそういうことを言われたくないから、事なかれ主義で放任してしまう。向き合うのは「外野」の声なのか、目の前の子供たちなのか―。