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薬の「容器代」無料と有料の薬局があるのはなぜ?

高垣育薬剤師ライター、国際中医専門員
(提供:イメージマート)

6月に入ってからSNSで「薬局で軟膏の容器代がかかった」「こどもの薬はいつも自己負担ゼロなのに容器代の支払いがあった」という投稿をちらほら見かけるようになりました。なぜ、今まで容器代が無料だった薬局で、軟膏やシロップなどの薬を入れる容器代がかかるようになったのでしょうか。一方で容器代を無料とする薬局があるのはどうしてなのでしょうか。

有料になった理由は調剤報酬改定

6月より薬局から容器代を請求されるようになった理由は、調剤報酬改定が行われて実費を患者さんからいただいても構わないということになったためです。

これまで軟膏やシロップを入れる容器は薬局が患者さんに貸与することが原則でした。

どういうことかというと、お会計のときに容器代をお預かりしてお薬を出した場合、後日に再利用できる容器を返却していただいたら実費をお返しすることとなっていました。つまり薬局は実質無償で容器を患者さんに提供していたのです。

では薬局では容器を返していただいたら、それを洗うなどして再利用して使っていたかというと、わたしが勤務していた薬局では衛生上の問題などから廃棄していました。せっかく患者さんが返却してくれても容器の再利用はしないのが現状でした。

今回の調剤報酬の改定では容器の取り扱いが見直され、「投薬時における薬剤の容器等については、衛生上の理由等から薬局において再利用されていない現状を踏まえ、患者が医療機関又は薬局に当該容器を返還した場合の実費の返還の取扱いを廃止する」ということとなり、「投薬時において薬剤の容器を交付する場合は、その実費を徴収できる」とされたのです。

容器代が有料の薬局と無料の薬局があるのはなぜ?

こうした経緯があり、薬局は患者さんから容器代をいただいても良いということになったわけですが、現在容器代を患者さんからいただく薬局と無料にしている薬局があるのはなぜなのでしょうか。

神奈川県で2店舗の薬局を経営している薬剤師Aさんに話を聞きました。

Aさんの薬局では、1店舗ではこれまで通り無償のままで容器代を提供していますが、もう1店舗では軟膏容器の代金を無償から1個50円(税込)へ変更したといいます。

理由を尋ねると「無料にしている方の店舗は新しく出店した薬局で、まだ顧客が少ない。周辺に競合となる薬局も多いので、周りにあわせて無料提供としている。しかし本音を言うと有料にしたい」とのこと。

一方の店舗で容器代を請求することにしたのは「薬価等が下がる一方で最低賃金は上がり、以前に比べて経営がますます苦しくなっている。薬局で支払うことになる月々の容器代の負担も厳しい状況のため」だといいます。

このように、いまのところ薬の容器代の取り扱いは薬局によるというのが現状です。そのため、Aさんの薬局のように有料の店舗と無料の店舗があったり、薬局により容器の価格が異なったりする状況となっているのです。

容器代の負担は避けたいときの方法は?

では、容器代の負担を避けたい場合にできることはあるのでしょうか。

いずれも薬局を利用する人にとっては手間がかかり、面倒な方法ですが2つの方法があります。

ひとつは事前に薬局のホームページなどを調べてみることです。薬局によっては容器代を明記しています。

二つ目は、処方箋を出すときに容器代について確認するという方法です。

薬を受け取るときではなく、処方箋を出すタイミングで確認するのがおすすめです。なぜかというと、薬が出来上がってからキャンセルしてほかの薬局へ行くと、次の薬局で薬を作ってもらうのにまた時間がかかるためです。

また薬局の立場としては、薬がキャンセルになると薬の内容によっては廃棄になることがあるため、出来れば処方箋を出すときに確認していただきたいという事情もあります。

とはいえ、薬局に行くたびにこのようなやりとりをしなければならないのは利用者には負担になります。患者さんにも、薬局にも負担が少ない仕組みが望まれます。

■参照

厚生労働省:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】

薬剤師ライター、国際中医専門員

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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