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バチカン キラーロボット使用の禁止訴え「AIのような新しい技術は人類の生活向上に使われるべき」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2021年12月にスイスのジュネーブで国連の特定通常兵器使用禁止制限条約(Convention on Certain Conventional Weapons: CCW)の会議が開催されており、自律型殺傷兵器について議論されている。AI(人工知能)技術の発展とロボット技術の向上によって、軍事でのロボット活用は進んでいる。戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。

人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。ロシアやアメリカ、イスラエルなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。

会合に先駆けて政府専門家会合(Group of Governmental Experts :GGE)が行われていたが、各国で自律型殺傷兵器に対する姿勢が異なるため、自律型殺傷兵器開発や使用の規制や禁止に向けた大きな進展は見られなかった。

そのような状況をうけてローマ教皇庁(バチカン)の国連代表部のジョン・ピュッツアー氏は「人間の判断を介さないで攻撃が行われてしまう兵器を禁止することがまだできないのはローマ教皇としてはとても残念に思います。人間だけが生死の判断をできます。自律型殺傷兵器は恐ろしい兵器です。兵器の使用には十分な人間の判断が必要です。自律型殺傷兵器にはそのような人間の判断がありません。国際人道法で規制されるべきです。新型コロナウィルスの感染拡大はまだ止まっていません。AIのような新しい技術は人類の平和な生活のために使用されるべきです」と訴えていた。ローマ教皇庁(バチカン)では以前から自律型殺傷兵器の開発と使用は非人道的であることから反対していた。

2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製のKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行うものは自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのガーディアンは報じていた。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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