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「邪悪な黒幕から、やっと解放された」環境活動家グレタさん意味深ツイートの真意は?

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
グレタ・トゥンベリさんのツイッターより

 「How dare you!(よくもそんなことを!)」―国連気候行動サミット(2019年9月)で、口先だけは立派なことを言いながら温暖化対策に後ろ向きな世界の政治家達に対し、憤りを露わにした演説を行ったことで、「怒れる少女」として、日本でも話題となったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん。そのグレタさんが今月3日に18歳の誕生日を迎えた際のツイッターでの「意味深な」投稿が、CNNやELLE等の各国のメディアが取り上げるなど話題となっている。

○痛烈な皮肉でありジョーク

 その「意味深」なツイートとは、以下のようなものだ。

「皆さん、私の18歳の誕生日を祝ってくれてありがとうございます。今夜、皆さんは私を地元のパブで見つけ、私が隠された闇深い秘密について、温暖化と学校ストライキの陰謀を、私を支配してきた黒幕がもう私をコントロールできないことを、全て暴露するのを目にするでしょう。私はやっと解放された!」

 この投稿には、「FLAT MARS SOCIETY (平面火星協会)」と書かれたTシャツを着て、親指を立て微笑んでいるグレタさんの写真もアップされている。一体、どうしたことかと思うような投稿であるが、心配無用。これは彼女なりの痛烈な皮肉でありジョークである。

 グレタさんは、心無い人々、とりわけ温暖化に懐疑的な陰謀論者たちから「温暖化対策を利権とする大人たちに操られている」と誹謗中傷されてきた。だから、そうした陰謀論を皮肉り、欧州での成人年齢である18歳を迎えたことで「大人に利用される子ども」というレッテルから解放されると喜んでいるのである。

 これまでも米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領、ブラジルのボルソナロ大統領などから批判されたり、揶揄されたりする度に、グレタさんはウィットに富む返しをツイッター上でしてきた。今回の投稿も、自身を誹謗中傷する陰謀論者たちへの返しというわけだ。

○「平面火星協会」Tシャツはアンチテーゼ

 「平面火星協会」というTシャツのロゴも、痛快なアンチテーゼだ。米国では「神が世界を作った」として科学を否定するキリスト教原理主義と、政府やメディア等に人々が騙されているという陰謀論が結びつく、一種の社会現象がある。その一つが「地球は球体ではなく平面だ」だとする"フラット・アース(平面地球論)"であり、こうした主張を信じる人々によって"Flat Earth Society(平面地球協会)"なる団体までもある。いわゆる「平面地球論者」の人々は、温暖化懐疑論との親和性も高く、実際、「温暖化は嘘」だと主張する「平面地球論者」も少なくない。

 そうした科学を軽視し、温暖化は嘘だとして対策を行うことを拒む人物の最たる者が、ドナルド・トランプ米国大統領その人である。そして、その支持層として、キリスト教原理主義者や「Qアノン」等の陰謀論者が、近年、存在感を増してきている。つまり、グレタさんのTシャツの「平面火星協会」―地球ではなく火星とのロゴは、科学を軽んじ温暖化の現実から背を向ける風潮をおちょくったもの、というわけだ。

○笑えるけど笑えないし、日本も他人事ではない

 今回のグレタさんの投稿には、筆者も大いに笑わせてもらったが、非科学的で後ろ向きな姿勢は、日本でも他人事ではない。今なお根拠に乏しい温暖化懐疑論をメディアが取り上げたりするし、「原発や高効率な日本の石炭火力発電は温暖化防止に役立つ」なる欺瞞を、政府や大手電力、プラントメーカー等が主張し続けている。また、主に右派・保守系のコメンテーターやYahoo!利用者を含むインターネットユーザーには、グレタさんへ露骨に反発し、罵る人々も少なくない。

 だが、温暖化が進行すれば、日本の人々も当然、危機に直面するし、温暖化対策は単なる負担だけではなく、新たな雇用やイノベーションを生むチャンスでもある。現実に向き合わず、社会がより良い方向へ向かうチャンスを逃してしまうのでは、全く笑えないということだ。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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