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集団レイプ容疑者の解放求め暴動、閣僚の関与の疑いも―イスラエル

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
現地メディア記者/番組司会者アルモグ・ブッカー氏のX(旧ツイッター)より

 今月29日、イスラエル南部のスデ・テイマン基地に数百人*の暴徒が押しかけ、軍側と衝突した。現地報道によれば、暴徒には武装した者や国会議員も含まれていたという。イスラエル軍は、ガザ攻撃で拘束したパレスチナ人達に組織的な性暴力を行っていることが、国連含む複数の組織や人権団体から批難されており、今回、9人のイスラエル兵が性的暴行に関わった容疑で、軍事法廷にかけられた。これに対し、暴徒達はこの9人の解放を求め、スデ・テイマン基地に押しかけたということだ。

*1000人以上との報道もある

 イスラエルの医師達や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の報告によれば、昨年10月からのガザ攻撃で、イスラエル軍は女性や少年、老人も含む多数のパレスチナ人を十分な容疑もないまま拘束し、彼らを酷く虐待しているという。あるパレスチナ人男性は肛門に電気棒を突っ込まれ、その後、死亡したとのことだ。

 今回、軍事法廷に出廷した9人のイスラエル兵らも、パレスチナ人の被拘束者への性的虐待の容疑がかけられている。その詳細をイスラエル軍は明らかにしていないが、現地報道をまとめると、「ハマスの幹部」とされるパレスチナ人(当事者達の弁護士は否定)に対し、肛門に棒を突っ込む等をして腸を破裂させるなどの暴行を行ったのだという。

 9人のイスラエル兵が逮捕されたことについて、主にイスラエルの右派政党やユダヤ教右派団体等が反発。イスラエル政府閣僚であり国家安全保障大臣イタマール・ベン・グビル氏は、兵士らを「我々の最高の英雄」と賞賛し、その逮捕を「恥ずべき行為にほかならない」と批難した。このグビル氏に対しては暴動を煽ったとして、イスラエル国内でも批判の声があがっている。

 9人の兵士の逮捕に憤る群衆は、スデ・テイマン基地に押しかけ、現地報道によれば、その混乱は「無政府状態」(イスラエル軍関係者)のようだったという。また、暴動に対応した警察は、軍が事件の規模について十分な情報を提供しなかったとして激怒しているのだという。

ガザで拘束したパレスチナ人の処遇をめぐっては、イスラエルの国会でも問題となっている。与党リクードのハノック・ミルウィツキー議員は、「彼がハマス戦闘員なら、何をしても正当だ」と拷問や虐待を正当化した。だが、国際人道法は、それが兵士や戦闘員であれ、捕虜の虐待を禁止している。

 ガザ攻撃をめぐっては、イスラエルの国際法・国際人道法の甚だしい無視が、国連や人権団体、そしてイスラエルを支持する国々の間でも問題視されている。今回の騒動も、その一連の動きの中にあると言えるだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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